第九章 双月の舞踏会
第一話 朝食会
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の子の二人でここで生活するようになったのさ。とは言え元々貴族の娘。生活するにも勝手が分からず苦労したよ。森の中には食べ物とか色々あるけど、どうしてもそれだけじゃ足りなくて必要なものが出てくるわけよ。とは言え使えば金はなくなるもの。外に稼ぎに出るようになるのも遅くはなかったね。稼ぐとなると人に名前を名乗る必要があるだろ、そんな時、貴族だった頃の名前を言えるわけもなく、自然と偽名を使うようになったのさ」
長々と喋り乾いた喉を、手に持ったコップを傾け熱いお茶で潤すと、ウエストウッド村に建っているこじんまりとした小さな家に視線を向けた。
「ま、それで森から出ては色々と稼いで必要なものを買っては戻るということを繰り返してたんだけど……そのうち余計なものまで拾ってくるようになっちまってね」
「余計なものって姉さんっ!」
ロングビルの言葉に、ティファニアは顔を上げ批難の声を上げた。
白い顔を赤く染めて怒るティファニアに手を上げたロングビルは、苦笑いを浮かべながら謝罪する。
「ごめんごめん。余計なものじゃないよ。言葉の綾さ、冗談だよ。そんなに怒らないでおくれよ」
「余計なものって何のことよ?」
ルイズが腕を組んで小首を傾げる。
ロングビルは、サウスゴーダ村にある家を一つ一つ見回すと、目を細め小さな笑みを浮かべた。
「孤児さ。昨日の夜シロウが言ってただろ。ここは子供しかいない村だって。キュルケが言った孤児院みたいな村ってのは間違いじゃないんだよ。わたしたちがこの森に住むようになった頃からアルビオンは大分きな臭くなり始めてね。小競り合いがあちこちで始まって孤児が何人も出始めたんだよ。教会とかが保護してたみたいだけど、数が多くてね。あぶれる子が何人もいたのさ。そういう子を外に稼ぎに出ては拾ってくるようになったのさ」
「優しいんですね」
「よしとくれ。そういうんじゃないさ。ただの気まぐれだよ」
シエスタの笑顔から逃げるように、ロングビルは手を振りながら顔を背けた。
「随分と多い気まぐれだな」
「まさに気まぐれ、ですね」
ウエストウッド村と呼ばれるこの子供だけの村にどれだけの数の子供がいるか知っている士郎とセイバーが、口元に笑みをたたえながらロングビルに笑いかける。
微笑まし気に笑いかけられるロングビルは、顔を真っ赤にすると、自分に向けられる笑みを消すように両手を左右にぶんぶんと勢いよく振り出した。
「何だい何だいっ!! 何か言いたいことでもあるのかいっ!」
「ね、姉さん落ち着いて。大丈夫。みんな分かってるから」
立ち上がろうとするロングビルの肩を押さえたティファニアが、励ますように声を掛けるが、明らかに逆効果であった。
ますます顔を真っ赤にしたロングビルが、とうとう顔
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