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ソードアート・オンライン〜神話と勇者と聖剣と〜
番外編:或る飛龍の物語
或る飛龍の物語《3》
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基本単独で行動することの無いプーカが、こんな場所で一人で暮らしているのだろうか。

「普通はここに人は入ってこれないはずなんですが……なんででしょうね。神様が、ハザードさんを呼んでくれたんでしょうか」

 面白いことを言う奴だな……。ハザードはそう感じた。どこかシャノンやグリヴィネと似通った神秘さを感じさせる少女だった。

「君は、ここに一人で住んでいるのか?」
「はい。ちょっと事情があって、領土から抜け出してきたんです……」

 レゲネイド。
 
 《出奔者》《背教者》などを表す単語。この《アルヴヘイム・オンライン》では、自領土を抜け出したり、追放された者のことを指す言葉だ。自分の種族に関係なく行動するプレイヤーの事で、現在は種族間のひずみがなくなってきたため、この言葉は意味をなさない者となってきている。

 つまりこの少女は、かつてつかわれていたのと同じ意味でのレゲネイドということなのだろうか……?

 それより、ここからでなくてはいけない。セモンが心配して大鷲のところまで行ってしまっては厄介だ。あれは、俺の獲物だ―――――

「……すまないが、急用があってな。ここから出る方法を教えてもらいたいのだが……」
「あ……はい。向こうの方に、小さな鳥居みたいなのが見えると思います。そこを出れば、一応アルンの近くの森に続いていると思うんですが……」
「そうか。ありがとう、助かった」

 ハザードは背中の翼を広げた。本来サラマンダーの赤い半透明の翅があるべきそこには、『竜翼』とでも呼ぶべきものが生えている。これはハザードのアカウントが、チートアカウント《ファーヴニル》だったころの名残で、現在は《ザ・バーニングバーン・ドラゴン》レノンを、《獣聖》のスキルである《融合》を起動させることで自身に憑依させ、展開させる力の一端である。

 本来はこれに加えて竜尾を出現させることで、理性の20%と引き換えにボスモンスター補正を得られるアビリティだが(その場合はカーソルは有効モンスターを示す黄色に変わり、名称も《ファーヴニル・ザ・ハザード》に変更される)、現在は羽だけの出現だ。機動力がかなり増し、スピードが上がる。急ぐ時には重宝するスキルだ。

「それでは、さらばだ」
「あの!ハザードさん」

 エミリーの声に、いざ飛び立たんとしていたハザードは急制動をかけられる。

「……なんだ?」
「あの……よかったら、また来てくれませんか」

 エミリーが差し出したのは、オレンジ色のクリスタルの嵌ったネックレスだった。彼女の首にも同じものがかけられている。結界エリアに立ち入るための許可証(パスポート)だ。

「……わかった。機会があれば、また来よう」
「ありがとうございます。あの、呼びとめてしまってすみません」

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