第十七話 狂乱の宴
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少女の声が開戦の合図だった。
ランサーは一気にその場を疾風のように飛び出す。
逆巻く突風。
朱槍を手に、蒼い弾丸となったランサーが疾走する。
迎え討つのは紅い弓兵の黒白の双剣。
アーチャーもランサーとほぼ同時にその場を踏み出していた。
神風となったランサーは高速の槍をアーチャーへと突き出す。
それをアーチャーはすんでに双剣で受け流した。
「チッ……!」
アーチャーの舌打ちが聞こえる。
ランサーの槍は、喉、肩、眉間、心臓を間暇なく貫こうとする。
残像さえ霞む高速と言わざるを得ない激烈な槍捌きは、一撃ごとにアーチャーの双剣を弾く。
「たわけ、弓兵風情が接近戦を挑んだな――――!」
ランサーの一撃は烈火のごとく激しい。
アーチャーは必殺の槍を、双剣を盾に変えて受け流し、間合いを詰めようとする。
「ふ――――!」
眉間に迫る槍の穂先を弾き、ランサーの間合いを潰そうと踏み込むアーチャー。
だが…
「――――」
「ぬっ―――!?」
ランサーの槍は一瞬で主人の手元へと戻り、アーチャーの双剣を弾く。
ただ、速いだけではない。
それ以上に巧いのだ。
ランサーの槍には緩急が無く、一撃一撃がとてつもなく重い。
アーチャーは守りに入るが、素人の私が見ても反撃の手段が見つからない。
「――――!」
一際高い剣戟が耳を打った。
ランサーの槍を弾いた双剣は、そのまま甲高い音を立てて、二振りとも崩れ去ったのだ。
武器を破壊するランサーの技。
一見何の変哲もない突きで、アーチャーの剣のいちばん弱い部分を突いたのだ。
「この間抜けが」
ランサーの罵倒する声が響く。
その一挙手一投足には躊躇がない。
ランサーはがっしりと地面に根を下ろすと、アーチャーの眼を見る。
これで勝負を決めるつもりだろうか。
「ふっ―――!」
一瞬だった。
一息の内に放たれたランサーの槍は視認すらも許さない。
一瞬だが三連の槍の軌道は何とか判断できた。
眉間、首、心臓。
槍は全て、急所を狙って放たれる。
「ア……!」
アーチャーと呼ぶ事すらも出来なかった。
速すぎる。
言葉を発する事も出来ないほどの速さでランサーは突きを発射していた。
だが…
「――――!?」
三つの刺突はアーチャーに届く事はなかった。
アーチャーの手には再びあの中華風の双剣が握られている。
「チィ、どんなトリック使いやがった」
ランサーが思わず毒づく。
一瞬でアーチャーの手に双剣が戻った事に対して、驚きと苛立ちが見て取れる。
「ハ、弓兵風情が剣士の真似事とはな」
その言葉と共に、ランサーが再び走り出した。
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