第9話 眠れる森の美少女だそうですよ?
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て居る状況が、森の樹木を統べる存在が森の異常事態の改善を願って居るのなら、自分たちの道行きが邪魔されない理由に説明が付く。しかし、それならば、リューヴェルト自身が上空から森の奥を目指した時に蟲に邪魔された理由が、もし、その蟲を統べるモノが、この森の異常な状態が続く事を望んでいるからだ、と仮定したのならば……。
しかし……。
「今は判りません」
しかし、ハクはリューヴェルトを少し見つめた後に、首を左右に振ってから、そう答える。
その彼女の仕草に重なる鈴の音色。
そして、
「でも、目的地が近付いて来て居る事も確かです。
其処に辿り着いてから判断したとしても、遅くはないと思いますよ」
リューヴェルトを真っ直ぐに見つめた後、少し小首を傾げるようにしてから、彼女に相応しい春の微笑みを魅せた。
その時、リューヴェルトの後方。つまり、現在、向かっている森の奥の方向から、春に相応しい優しい風が吹き寄せて来たのだった。
そう。この森に入り込んでから一度も感じる事の無かった爽やかな風の動きを……。
☆★☆★☆
頬に感じる風が新鮮な空気。濃い緑に包まれた森の大気とは違う、別の何かを伝えて来る。
木々の間から差し込む太陽の光がだんだんと力を増して行き、周囲の森から感じていた陰の気が薄まって行く。
そして、ざわざわとした嫌な雰囲気が少し遠ざかって行った。
そう。先ほどまで確かに感じて居た違和感。岩陰に。木の下の闇に感じて居た悪意有る存在の気配を感じなくなって居たのだ。
同時に、何処か遠くから、誰かが自分たちの事を嘲笑うかのような視線で見つめて居る。そんな意味のない不安感も、その風が吹いて来る場所が近付くに従って払拭されて行った。
「ここは……」
その場の入り口に立ったリューヴェルトが、独り言のようにそう呟く。
その場所は――――
急に広がった視界。
森の中に丸く広がる空白。
幻のように存在する泉。そして、この空白の地点を護るかのように埋め尽くす妖樹たち。
その泉の畔。薄い紅色の花が咲く樹の根本に眠る少女が一人。
そして、その少女を護るかのように周囲を埋め尽くす妖樹たちの群れ。
大きな四本の触枝が絡み合い、太い根のような、しかし、ふたつの蹄を持つ数本の足がその樹木のような身体を支える。
その妖樹たちが、まるで自らの母の如く、そして、神の如く周りを護る存在。
「あの寝ている女の子が、その森の古老と言う訳かいな」
一時的な失調から回復した白猫のタマが、かなり呆れたような声でそう言った。
そう。その少女は間違いなく眠って居た。
東洋人風の顔立ち。しかし、白磁と表現しても良い肌理の細かな肌。艶々とした黒髪を
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