第9話 眠れる森の美少女だそうですよ?
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「わたしの名前はリューヴェルト。コミュニティ翼使竜のリーダーを務めて居ます」
濃い緑の香りを鼻腔に感じながら、自らの身体の下敷きとなった下草の絨毯からゆっくりと上体を起こし、リューヴェルトはそう話し掛けた。
少し不安に思いながらの動作だったが、大丈夫。身体の各部位へのダメージを感じる事は一切なし。上空から蟲の毒に犯された上体で落下した割には、身体は通常と変わらない形で動く。
おそらく、この場に居る少女たちが何らかの回復魔法を行使してくれたのでしょう。
「あたしは、この死の森の直ぐ南に有る白い光って言う零細コミュニティのリーダーで美月。よろしくね、リューヴェルトさん」
そんなリューヴェルトの挨拶に、金髪碧眼。長い豊かな髪の毛を頭のやや上部で二か所のシニオン。つまり、判り易く言うとお団子状にしてから、緩やかに下方、自らの腰の辺りにまで流した少女。白い光のリーダーの美月が答えて来た。
死の森と呼ばれる森に、少しそぐわない明るい雰囲気で……。
そう。ここは森の奥に進む道の真ん中。所謂、けもの道と呼ばれる場所。
身体の状態を確認した後に立ち上がるリューヴェルトが、改めてそう確認する。
仄暗い森の中に有ってリューヴェルトの立つ周囲のみ、何故か陽光が差し込み、彼自身がスポットライトを当てられたかのように周囲から浮かび上がって居る状態。
足元に目を転ずると、其処には巨大な樹木の根が目立つが、それでも下草に覆われる事の少ない、土の露出した地面が存在した。
上方に目を転ずると、リューヴェルトの上方の葉がかなり乱れ、枝が折れた状態。この隙間より差し込む春の陽光が、彼を暗い森の中で目立つ存在へと化している原因。そして、この折れた枝や、乱れた葉。更に、つい先ほどまでリューヴェルトが倒れ込んでいた場所から、光り差さない方向へと鬱蒼と生い茂る緑の下草たちが、上空から墜落した際の衝撃を和らげてくれたのは間違いない。
そう。此のけもの道を一歩でも外れると、其処は深い下草に覆われた人間の侵入を拒む自然の領域。今、リューヴェルトが立つ地点こそが、動物と植物の世界の境界線上と言うべき地点。
いや。むしろ、人の手が入る事の無くなったこの森で、このようなけもの道が残されている事の方が奇妙と言える程の、歩きやすい道と言うべきであろうか。
「それで、リューヴェルトさんは、何で、こんなトコロに居るのかな?」
☆★☆★☆
「ふ〜ん、またギアスロールが降って来たんだ」
前日の黄泉比良坂内での出来事を思い出しながら、美月が少しうんざりとした雰囲気でそう答えた。
肩に何か大きな荷物の入った袋を背負い、下草は存在していないとは言え、歩き辛いはずの樹木の根が目立つけもの道を危なげない足取りで、森の奥に向か
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