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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
知らず立ちこめる暗雲
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なったことが、精神的な余裕に繋がったのだろう。
今までは無意識の内に一線を引き、拒絶していた節があった。
守矢家に限らず、幻想郷そのものに自分の居場所があるのかと疑惑の念を抱いていた。
魔術師でさえも知らないであろう、隔絶された土地。それは最早、別世界といっても過言ではない。
そんな場所に自分の居場所を見出せる訳はない。………そうやって逃げていた。
居場所など、自分で造るもの。座して待ったところで得られはしない。
最初はそれでもよかった。
はっきり言って私はいつ消えるかもわからない不確定な存在だ。
サーヴァントとして召喚された筈の私が、マスターもなしに現界できている理由も不明。
更にはエミヤシロウの性質上、いつ無茶無謀を繰り返し命を落とすかもわかったものではないとくれば、必要以上に他者と接点を持とうと思わなくなるのは、別段不思議なことではない筈。
孤独がエミヤシロウの死の理由の一端を担っていると理解はした。
だが、自身の目的の為だけに関係を結び迷惑を掛けるなんてことを、エミヤシロウが由としないのは当然のこと。
縁がゼロとなったこの世界で、孤独に目的の為に生きていくのも悪くないと、そう思っていたこともあった。

だが、知ってしまった。
家族の温かみを、置き去りにしてきた還るべき場所と同じ暖かみを持つ場所を。
甘い毒は毒と知りつつも受け入れてしまう魅惑の味となる。
その毒はエミヤシロウという個を崩壊させてしまう可能性を秘めている。
それが遠坂凛が望んでいる結末だということも、理解している。私にとっての幸福の終着点は、平凡な人生なのだと彼女は信じて疑っていないのだろう。
―――だが、それでは駄目なのだ。
エミヤシロウが幸せになる為に、エミヤシロウが死んでしまっては意味がない。
平凡な毎日というぬるま湯に浸かるエミヤシロウなど、最早別人だ。
だからこそ、その選択だけはしてはいけない。

………だったら果たして、エミヤシロウとして在り続けながら理想を追い続けることができるのか。
一を切り捨て九を救うなどと妥協し続けてきた男が、今になって欲張りになったところでそれを為すことができるのか?
不確かな不安ばかりが押し寄せ、地に足がつかない感覚が支配する。
この苦悩を情けないの一言で一蹴してくれる、そんな頼りがいのあるパートナーは、ここにはいない。

「いかんな、最近気落ちしてばかりだ」

悩んで解決するなら当にしている。
うだうだ悩むのは性ではないのだが………精神的に弱くなっているのだろうか。

「ん………?」

気のせいか、空気の流れが変わった気がする。
穏やかな波を保っていた筈が、今や不規則に波を荒立てるばかり。
しかも徐々に近づいてきているような―――
音源を探ろうと空を見上げると、二つの影
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