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ストライクウィッチーズ1995〜時を越えた出会い〜
第八話 カモミールティー
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「ん……あれ、わたしは……?」

 目が覚めてみると、そこは基地の医務室だった。
 清潔なシーツと、鼻の奥がツンとする薬の匂い。壁にかかった古めかしい振り子時計は、ちょうど七時を指していた。窓の外はすっかり暗くなっていて、今が夜だという事を和音に教えてくれる。

「そっか……わたし、魔法力切れで倒れたんだ」

 徐々に和音の頭が覚醒し、記憶が蘇ってくる。
 アフターバーナーを全開にして基地に帰投した和音は、極度の疲労と魔法力の消耗によって意識を失ってしまったのだ。
 誰かいないのだろうかと和音が辺りを覗った時、不意に医務室のドアがノックされて、お盆を手にした一人のウィッチが入って来た。

「――ようやく気がついたんですのね。まったく、扶桑のウィッチはお寝坊さんですこと」
「あ、クロステルマン中尉……」

 やってきたのは、お盆を手にしたペリーヌだった。そういえば、いつかもこんな風なことがあったなぁ、と思い返しながら、和音はベッドから起き上がろうとする。

「病み上がりの体で無理をするものではありませんわよ」
「ですが、クロステルマン中尉……」

 なおも和音が食い下がると、ペリーヌはフッと微笑んでから言った。

「ペリーヌ、で構いませんわ」
「あっ……ええっと、それは、その……」
「あら? それとも命令される方がお好みかしら?」
「……いえ、結構です、ペリーヌさん」

 素直でよろしい、と頷いて、ペリーヌはベッド脇のサイドテーブルに盆を乗せる。よく見ると、そこに乗っていたのは見るからに高級そうなティーセットだった。

「……昼間は、貴女に助けられてしまいましたわね」
「えっ?」
「正直、あのままでは共倒れでしたわ。本当にありがとう」

 涼やかな眼差しが和音を覗き込み、そっと微笑んで和音の髪を撫でた。

(わ! わわわっ!! ペリーヌ中尉!?)

 ベッドで半身を起こしたままの和音は思わず頬を赤くしてしまう。が、幸いにも室内は薄暗く、ペリーヌが気がついた様子はなかった。

「あ、あの! 宮藤さんはどうなりましたか?」
「もちろん無事ですわ。まったく、野生動物のような生命力ですのね、貴女よりも早く目を覚ましましたわよ?」

 そう言うと、ペリーヌは慣れた手つきでティーセットを取り上げ、凝った装飾の施されたポットから、温かな湯気の立つ何かをカップに注ぐ。一体なんだろう、と首をかしげる和音に、ペリーヌはカップを差し出した。

「ペリーヌさん、これは?」
「カモミールティーですわ。実家のハーブ園から取り寄せましたの」
「なんというか、かわったお茶ですね」

 手渡されたカップをおっかなびっくりで受け取り、「これ一杯で一体いくらするんだろう?」などという庶民臭さあふれる感慨に
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