第三十四話 少年期P
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。さすがにこれ以上近づいたらばれる為、様子を見るしかないけどな。
「―――憧れたんだ」
沈黙を破った副官さんの声に、俺はそちらへと顔を向ける。そして目を見開いた。眩しいものを見るような、一途な思いが伝わってくるようなそんな目。これは彼の本心なのだとそれだけでわかる、真っ直ぐな目。
「最初は魔力がないことに絶望した。直接自分の手で救えない現実に腹が立った。だからたとえ魔力がなくても救える側の人間になれることを、周りに証明したかった。俺の手は特別な力を持つ者よりも優れているんだと……」
魔力がないこと。このミッドチルダは別に魔力を持たないものを差別なんてしないし、優劣をつけるようなことはしない。現に管理世界で偉い役職についている人の中には、魔力がない人だっているんだから。
それでも、魔力があることで決まる世界はある。守られるものと守るもの。管理世界は質量兵器を禁じ、魔法を積極的に取り入れている。それはつまり、魔導師でなければ誰かを直接守ることができないということだ。もちろん間接的に助けることや、魔力とは違う別の力で助けることはできるだろう。それでも、魔力がない者が伸ばせる手は限られてしまう。
……そう考えると俺は、かなりズルい人間だ。転生して魔力をもらうことが決まっていた人間。本当に魔法の力がほしい人にではなく、ただ使ってみたいと思っただけのことで得てしまった魔法の力。俺が魔力を持たなかったからって、副官さんが魔法を使えるわけじゃない。魔力を持っている人だって大勢いる。珍しいということでもない。だけど―――
「そんな風に俺は……昔は思っていた」
「昔?」
「総司令官の副官になった時、チャンスだと思った。歴戦の魔導師として有名だったあの人を超えられれば、証明できると思ったからだ。だから、有能さを見せ、時に刃向って、そして―――」
「一蹴された」
「え、えぇー」
何したんだ、おじいちゃん。
「その後大笑いされたな。笑われたことにキレた俺が殴り掛かってしまったが」
「ちょっ、アグレッシブすぎるよ。しかも相手は一応おじいちゃんだよ」
「若かったんだ。あとそこは心配なかった。カウンターで逆に殴り飛ばされた」
本当に元気だね、おじいちゃん!
「その後も色々ぶつかったが、あの人は1度も魔法を使うことなく俺をのしてしまったな」
懐かしそうに、煤けたように笑う副官さん。あなた方も結構自由の人だったんですね、と俺は心から思ったけど。たぶん今の形に収まるまで、その後も色々あったんだろうな。副官さん諦め悪そうだし。
「まぁ、それのおかげかその後にあったゴタゴタかはわからないが。魔力があるなしとかものすごく小さな悩みだった気がしてきてな。あの人に勝つために悩んでいた俺か
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