第三十四話 少年期P
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尾行が水の泡だぞ」
副官さんも結構イライラしていますよね。暑さで頭がオーバーヒートしていたが、頬を両手で1回叩いて正気に戻す。最初は無言で追いかけ、緊張の糸を張り続けていた。でもおじいちゃんにも言われたが、緊張ばかりでは持たない。だけど、先ほどまでの軽口を言い合えるぐらいには、お互いに余裕が生まれてきたって感じかな。
「ムカつくのはなんであの人、フードかぶっていながら涼しげなんだ」
「おそらくだが、魔法だろうな」
「うへぇ。魔導師の可能性大か」
コーラルがいれば、もう少し詳しいことがわかったんだろうけどな。今のところ相手に気づかれた様子はない。これでもサーチ関係には力を入れているんだ。サーチャーが発動されているかぐらいなら俺にだってわかる。だけど、このままの状態だといずれ気づかれてもおかしくない。でも、下手に動くこともできない。
俺と副官さんがこうして大人しく尾行しているのは、相手を現行犯で捕まえるためだ。あのフードの人はそれなりにやり手らしく、管理局でも証拠をつかむことができていないらしい。限りなく黒に近い灰色。あと一歩で追い詰められるが、その一歩が遠い。なんとか捕まえさえすれば、埃がいくらでも出そうな人物らしいけど。
「やっぱり応援を呼びましょうよ。絶対に俺たちが捕まえないといけないわけではないですよね。というか相手が魔導師なら無理でしょ」
「人数が増えれば気づかれる可能性が増える。それにどちらにしても証拠がなければ意味がない」
「それはそうなんですけど」
俺は顎の方に流れてきた汗を手で拭いながら、小さく肩をすくめる。やっぱり諦めてくれないか。レアスキルのある俺だって怖いのに、ほぼ一般人の副官さんがこれだもんな。怖くないのか? 正義のためって言えば聞こえはいいけど、俺には絶対に無理だ。
なんせエイカの時だって、本当はびくびくしまくっていたんだぞ。あの時は事前に防御魔法を張ったり、相手の攻撃手段がわかっていたからなんとかできたんだ。もちろんアンノウンと相対することだってあるだろう。でも、そんなの極力避けるべきことなんだ。
「副官さんってなんでこんなに頑張るんですか」
あっ、と言ってしまってから慌てて口をふさぐ。まずい、意識せずにしゃべってしまっていた。俺はちらりと副官さんを見ると、バッチリと目があってしまう。これはさすがに聞かれたか。かなり不躾すぎた。でも、副官さんはクッ、と口元に笑みを浮かべるだけだった。
「その質問はわざとか?」
「え?」
「いや、いい。なんで頑張るのかか…」
副官さんは一度深く目をつぶり、すぐにそのまま視線を壁の向こうへと向ける。俺もつられてそちらに視線を移すが特に変わりはないようだ。どうやら相手は端末を使い、どこかに連絡をとっているらしい
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