第二章
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「果たして」
「杞憂だと思いますが」
「しかし実際に産業が停滞してだ」
そのうえでだというのだ。
「景気が悪いのだぞ」
「しかし全ては植民地から手に入りますので」
この貴族は同じことを言う。
「ですから何もです」
「憂うことはないか」
「全くかと」
多くの者がこうした考えだった、スペインには植民地がありそこから何でも手に入るから憂いはなかった、誰もがだ。
スペインは植民地から得るものを奪い続けていた、それを続けていっていた。
しかし王の危惧通り産業は落ちていきそしてだった、
スペインの国力は目に見えて落ちていっていた、王は遂に。
即位した直後出していたスペインの破産宣告を再び出した、それを聞いて。
宮廷の貴族達は目を瞠った、そして言うことは。
「あの、破産宣告とは」
「このスペインが破産したのですか」
「まさかとは思いますが」
「その様になったのですか」
「そうだ」
王は沈痛な顔で彼等に告げた。
「スペインは再び破産したのだ」
「では王よ」
貴族達はすぐにこう言った。
「植民地から銀をより多く持ち出しましょう」
「そしてそれで破産しただけの額を補いましょう」
「そうすればことは簡単に済みます」
「ですから」
「果たしてそうなのか」
貴族達は何ら焦った素振りも危機感もないがそれでもだった。
王は彼等のその態度にこそ危惧を感じ言うのだった。
「我々は何か過ちを犯しているのではないのか」
「過ち?」
「過ちといいますと」
「植民地に頼るべきではなくだ」
それよりもだというのだ。
「スペインの産業を育てるべきではないのか」
「銀を使わないのですか?」
「植民地からの富を」
「そうするべきではないのか」
王は破産からこう考える様になっていた。
「これはな」
「ですが王よ、植民地からは富が無限に手に入ります」
それでも貴族達は言う、こうした言葉を。
「銀に他の富に」
「それでスペインは破産を乗り切れるというのだな」
「何ならポルトガルを併合してもいいですし」
スペインの隣国であるそこもだというのだ。
「そうすればポルトガルの植民地からの富も手に入ります」
「香料等もだな」
「そうすれば何の問題もないではありませんか」
むしろスペインはより豊かになるというのだ。ポルトガルはブラジルだけでなくインド等にも進出している、そこの胡椒がこれまた莫大な富を生み出しているのだ。
「ですから案ずることなく」
「だといいのだがな」
王はハプスブルク家の証である下顎が出た顔を顰めさせて応えた。
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