第六章
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「いいな」
「はい・・・・・・」
その側近は項垂れた顔で聞いた、そして。
彼はその足で宮殿を出て宮殿の扉を開けて叫んだ。
「独裁者はここにいるぞ!」
「よし、宮殿に入れ!」
「あいつを殺せ!」
「逃がすな!」
怒り狂った民衆と軍が宮殿の中に雪崩込んだ、宮殿の中は広く迷路の様だったがその中を次々に制圧していき。
地下の奥深くにいたキムを取り囲んだ、キムは無数の銃口が突きつけられる中で怒りに満ちた目の彼等に対して問うた。
「貴様等、どういうつもりだ」
「俺達は生きるんだ」
「生きたいからだ」
これが彼等の返答だった。
「貴様ばかり腹一杯食わせてたまるか」
「俺達にも腹一杯食わせろ」
「何かあればすぐに粛清されるなんてもう御免だ」
「俺達は人間だ、人間として生きたいんだ」
「もう貴様の好きな様にさせるか」
「もうこれで終わりだ」
「ではわしをどうするつもりだ」
キムも怒りに満ちた目だった、その目で彼等に問い返す。
「これから」
「死ね」
今度の返答は一言だった。
「ここで死ね」
「今から蜂の巣にしてやる」
「せめて苦しまない様にしてやるから覚悟しろ」
誰かがここで叫んだ。
「撃て!」
この言葉と共に発泡されてだった、キムは実際に何百もの銃弾を浴びて蜂の巣になった、血塗れになった骸は宮殿の外に引き摺り出されて逆さ釣りで晒しものにされた。
その姿は全世界に放送された、これが独裁者の最期だった。
独裁者が倒れかなりましな政府が出来市民達は国際社会の援助を受けて何とか餓死は免れる様になった、そしてものも言える様になった。
その中である男の子が首都のキムの銅像を見て一緒にいる父親に尋ねた。
「あいつの像はあのままなの?」
「ああ、置いておくことになったんだよ」
父は息子にそうだと答えた。
「そうなったんだよ」
「どうして残すの?」
「あいつのことを忘れない為だよ」
それが残す理由だというのだ。
「それでなんだよ」
「けれどあいつは僕達を餓えさせて酷いことしてたよ」
「だからなんだよ」
父は息子に答えていく。
「それを忘れない為なんだよ」
「あいつがしてきたことを?」
「そう、餓えさせてくれたことも恐怖政治のことも」
そうしたことを全てだというのだ。
「忘れない為にね」
「残しておくんだ」
「あいつを忘れてはならないんだ」
父は息子に強い声で告げた。
「二度とこんな奴が出ない様に」
「じゃあ僕もなんだ」
「忘れてはならないんだ、こいつのことは」
そして餓えと恐怖政治のこともだった、銅像はその為に残っていた。
恐怖政治は終わった、しかしそれは忘れられなかった。キムの銅像はその象徴として永遠に残り続けるのだった、その頃の姿のままで
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