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恐怖政治
第四章

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「今から首都に向かう」
「えっ、首都にですか」
「そこにですか」
「そうだ、あの町ではなくだ」
 彼の故郷であるそこにではなくというのだ。
「首都にだ」
「同務中将まさかと思いますが」
 側近の一人が恐る恐る問うてきた。
「その作戦目的は」
「首都の解放だ」
 指揮官は言い切った。
「それを行う」
「それは反乱ですか」
「違う、解放だ」
 反乱ではなくそれだというのだ。
「圧政を行う独裁者からこの国を解放するのだ」
「それですか」
「ついて来る者はついて来るのだ」
 周りを見回して告げる。
「いいな」
「それでは私も行きます」
「私もです」
「私も」
 部下達は次々にこう応えた。
「このままでは我々も餓死するか粛清されるだけです」
「どちらにしても死にます」
「あの男に殺されてしまいます」
「国全体が」 
 そうなると口々に言う、指揮官に対して。
「ですからあの町ではなく首都に向かいましょう」
「そしてあの男を倒しましょう」
「我々が全滅してもどちらにしても同じです」
「ですから」
 かえって指揮官の背中を押す感じだった。指揮官もそれを受けて。
 軍を反転させて首都に向かわせた、その途中国中に向けて放送をかけた。
「独裁者を倒せ!」
「このままだと餓死か粛清だ!」
「あいつがいる限りこの国はよくならない!」
「民衆よ立ち上がれ!」
「今こそ革命の時だ!」
 こう放送をかけた、当然郡の部隊にもだ。
 キムもそれを聞いた、そして激怒してこう叫んだ。
「あの町だけではない!部隊もだ!」
「あの部隊もですか」
「皆殺しだ!別の部隊を向けろ!」
 肥満しきった身体できんきん声で喚く。
「あの部隊に呼応する者も同じだ!全員殺せ!」
 こう命じた、そして実際に討伐部隊が送られた。
 だがその部隊は踵を返し首都に向かって来た、そして彼等も放送をかけたのだ。
「我等もあの男を倒す!」
「もう従えるか!」
 こう叫んで反乱軍に加わった、そうしたことが続き。
 国中で反乱が起こり軍も官僚達もそれに加わっていく、キムの為に戦おうとする者は彼の手足である秘密警察にもいなかった。
「俺達も何時かやられるんだ」
「食料の配給を止められたら終わりだ」
「このままあいつの手駒であり続けてもいいことはないぞ」
「あいつだけがいい目を見る国だからな」
「あいつの気分次第でどうなるかわからないのなら」
 こう考えそしてだった。
 彼等も次々と反乱軍に加わった、そしてキムの細かい情報まで教えた。
 反乱軍は国土の殆どを解放し遂に首都を包囲した、その首都でも叛乱が頻発していた。
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