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恐怖政治
第三章
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 それは彼等だけではない、これまで抑圧され餓死を待つばかりだった民衆もだ。
「配給が完全になくなる?」
「そんな話が出ているぞ」
 彼等の中でもこうした噂が出ていたのだ。
「今はまだあるがな」
「それが完全になくなるのか」
「若しそうなれば終わりだ」
「今でも餓えているのに」
 それで口に入るものは何でも食べているのだ、配給も本当に僅かだがそれが貴重な生命線の一つであることは間違いない。
 その彼等もだった。
「これ以上辛い思いをするのなら」
「我慢出来るか」
「もう限界だ」
「このまま死ぬ位なら」
 彼等もまた決意した、そして。
 ある日誰かが市民の食料配給所においてこう叫んだのだ。
「腹一杯食わせろ!」
 これまでならその場で嬲り殺しにされて終わりだった、だが。
 この日は違っていた。骨と皮ばかりになっていた人民が続いたのだ。
「そうだ、食わせろ!」
「もう限界だ!」
「これ以上餓えていられるか!」
「餓死させる位なら殺せ!」
「この場で殺せ!」
「殺される前にやってやる!」
「もう我慢出来るか!」
 こう叫んでだった、配給所で暴動を起こし大規模な略奪をはじめた。
 それは忽ちのうちにその配給所の町全体に及び。 
 町全体が反乱の渦に包まれた、キムがその報告を聞いた時彼はまた己のハーレムで美女達を侍らし山海の珍味に美酒を楽しんでいた。
 だがそれを聞いてだった、彼は激怒してこう命じた。
「その町を壊せ!」
「町をですか」
「そうだ、町自体をだ」
 そうしろというのだ。
「爆撃しても構わん、町の者は皆殺しだ」
「ですが将軍様」 
 報告をする側近はキムに蒼白の顔で言った。
「町で暴れているのは一部です」
「一部の叛徒だけだというのだな」
「その者達と家族だけを粛清しましょう」
 町とそこにいる者全員を消し去る必要はないというのだ。
「そうしましょう」
「ならん!」
 だがキムはこう叫んだ。
「町で起こった、町全体の罪だ」
「だからですか」
「そうだ、焼き払え」
 こう命じた。
「わかったな」
「は、はい」
「そして貴様もだ」
 キムはその側近を剣呑な目で見据えながら彼にも言った。
「私に口応えしたな」
「そ、それは」
「私に口応えすることは許さん」
 だからだというのだ。
「貴様は家族と共に迫撃砲で消し去る」
 その処刑を行うというのだ。
「骨も残らない様にしてやろう」
 こう命じてだった、その側近を最初に粛清した。
 そして町に軍を送った、だがその軍の指揮官は。
 その街の出身だった、彼は軍を町に向ける途中で己の腹心の部下にこう言った。
「政治委員同務達を呼んでくれるか」
「軍のですか」
「そうだ、今いる軍のだ」
「全員ですね
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