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恐怖政治
第二章
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「これは当然のことだ」
「将軍様だからですね」
「それは」
「そうだ、当然のことだ」
 こう言っていたのだ、その侍らしている美女達に。
「私がこの国を支えているのだからな」
「この偉大なる国をですね」
「支えられていますね」
「私がクーデターを起こした時だ」
 前の大統領が外遊中に将軍だった彼が起こしたのだ、その際彼は大統領派も反対派も容赦なく粛清した。
「この国は腑抜けていた」
「あの男がそうした政治をしていましたね」
 その大統領のことだ、この国ではこう呼ばれているのだ。
「言論の自由、自由経済、そして各国との交流」
「全て堕落するものだ」
 上等の葉巻を吸いながら言う。この葉巻もこの国では彼だけが吸えるものだ。
「それで私は全て廃止したのだ」
「今の様にですね」
「偉大なる将軍様が仰る様に」
 この国はかつてはそれなりに栄えていた。健全な民主主義国家であり他国とも交流が深く栄えていた。だが。
 野心に燃えるキムはこの国のあり方を批判する、民主主義なら当然いる彼等をに金を掴ませて煽りその彼等とやはり金で忠誠を誓わせた軍人の一部を使ってクーデターを起こした。大統領は永久追放となった。
 それから手駒とした者達を次々に粛清し今に至る、その中で言ったのである。
「その私の言う通りにすればだ」
「祖国は永遠にですね」
「繁栄しますね」
「その通りだ、この国は私そのものだ」
 こうまで言うのだった。
「その私がいればだ」
「この国は永遠に」
「繁栄しますね」
「その通りだ。ではだ」
 キムは美女達を見回した、そのうえで言うのだった。
「これから御前達に私の素晴らしい愛を与えよう」
「はい、お願いします」
「将軍様の素晴らしい愛を下さい」
 美女達は頭を下げキムに応える、その周りにはキムだけが口に出来る山海の珍味に美酒があった、この国では彼だけが口に出来るものが。
 宴は連日連夜続き彼だけが満ち足りていた、車は高級な外車でありベルサイユ宮殿ですら霞む宮殿や別荘が幾つも建てられる。家具はどれも特注したものばかりだ。
 彼のみが贅沢を極めるその中で国民の不満は募る、しかし。
 少しでも彼に従わない素振りを見せれば家族全員が嬲り殺しにされてしまう。そうした状況ではどうしようもない様に思われた。
 だがそれも遂に終わる時が来た、きっかけは些細なことだった。 
 ある日だ、キムが直接率いるその秘密警察の間で不吉な噂が広がった。
「何っ、我々もか?」
「ああ、食料問題がさらに切迫してきてな」
 その結果だというのだ。
「配給制限が為されるらしいぞ」
「どれ位だ?」
「首都の人民並らしい」
 それ位だというのだ。
「どうやらな」
「人民並というと」
 それはどれ位かというと。

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