第二章
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「とにかく受かってくれよ」
「殿試にさえ受かればいいんだから」
「後はもうどうとでもなる」
「だから頑張ってな」
「勉強してくれ」
「そして及第してくれ」
こう言うばかりだった、外に出ても。
学ぶ為に学者から教えを乞いにその家に行くか飯を食う位だ、遊ぶことはない。
幼い頃からそうした日々だ、遊郭も文学も舞楽も知らない。
ただ学ぶだけの日々だ、目的は及第だ。
その中でだ、王は妻を迎えたが。
妻を観ることはなかった、やはり朝から晩まで書を読むばかりだ。妻もその夫に対してこう言うだけであった。
「是非お励み下さい」
「ああ」
王は妻の言葉に机に向かったまま頷く。
「そして」
「及第して下さい」
「そうするよ」
こう応えて書を読み何かを書くだけだった、一応夜の務めは子孫を残す義務だから少しはやった、だが子供が出来ても。
子供を見ない、それも全くだ。
子育てにも関わらず省みることもない、ただ及第だけを考えていた。
その中で王も劉も郷試や会試は通った、しかし。
二人で共に飯を食っていてもそのことについて表情のない顔でこう言うだけだった。
「殿試に受からないとね」
「終わりじゃないからね」
目に光はない、お互いはおろか食べている飯も見てはいない。
味わってもいない、言葉もぽつぽつとしている。
「だからね」
「食べ終わったらね」
「また勉強だよ」
「それだね」
感情のない言葉で話すだけだった、そして。
彼等は家に帰ってまた書を開く、夜遅くに寝るまで読むばかりだった。
試験の会場、何度めかに受けたそこでもだった。
試験を監視する官吏にこう言われたのだった。
「ではここに入れ」
「はい」
「知っているか、ここは」
「既に」
二人共全く同じ顔でそれぞれ応えていた。試験の場所は違っているのに。
「三日入りですね」
「そうだ、寝具や食べるものは持って入っていい」
試験の間個室から出ることは許されない、だからこうしたものは持って来てよかった。
「その間試験を受ける」
「わかりました」
視点の定まっていない目で応えるだけだった、そして。
試験を受ける、これまで学んできた成果を果たす時だった、だが。
彼等は何も思うところなく答案に書いていくだけだった、そして書き終え見直しをしてから。
会場を後にする、そして及第を見ても。
何も表情を変えない、それぞれの妻にこう言われてもだ。
「おめでとうございます、殿試ですね」
「そうだな」
二人共ここでも同じことを言う。
「受かったな」
「ではこれに受かれば」
「終わりだ」
やはりこう言うだけだった。
「この科挙もな」
「朝廷に参内出来ますね」
妻はそれを栄達と考えていた、両方
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