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呉志英雄伝
第五話〜調練〜
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、すぐにその舌を切り取ってくれる。それに私にはどうしてもこの軍に入らなくてはならない理由があるのだ。………徐盛文嚮、推して参る」





片や槍を手にし、殺意をみなぎらせて相対する敵を睨みつける美女。
片や木の枝を肩に預け、相対する敵からの殺気を飄々と受け流す少年。


昼過ぎ、日が西に傾き始めた頃、二人の影が急速に接近した。

















太陽が空の中央を通過し、西に傾いた頃。

二つの影が接近し、交差した。



ガキッ



ガキッ





調練場に響き渡る剣戟の音。
この音を聞いた者は、恐らく全員鍛錬の最中と推測し別段気にもかけないだろう。しかしこの戦いの様子を目にしたらどう思うだろうか…


「はぁあああああああああああああああああ!!!」



ガキッ



蒼髪の美女が赤髪の少年に槍を振り下ろす。それもすさまじいほどの速度で。彼が一般の兵士ならば間違いなく頭蓋が陥没、武器で受け止めたとしても、武器を支える腕に罅くらいは入るだろう。
それほどまでに徐盛の攻撃は速く、鋭く、そして重かった。しかし先ほどから聞こえてくる音から察することが出来る通り、剣戟の音は幾度となく続いている。
もし彼が一般の兵士であればよくても腕の骨が粉々だ。







(何故だ!何故受け止められる!?)


「とても素直な軌跡ですね」


だが受け止めている少年は違った。
動きが重くなるほどの殺意をその一身に受けて、それでもなお徐盛の攻撃を軽くいなしている。しかもこともあろうか、正規の得物である槍に対し、そこらに落ちていた木の枝を以て…

ですが…
少年は前の言葉に加える。


「正直読みやす過ぎてあくびが出てしまいます」


通常ならば速攻で粉砕される木の枝で、器用にも徐盛の攻撃を支え、そして次の行動に移る。
徐盛のすばやい突きを木の枝を以て下方へと払いのける。


「なっ!?」


自らの攻撃の力に相手の払いの力が上乗せされ、体勢が前のめりになる。
その身を前に投げ出された徐盛は襲ってくるであろう衝撃に備えて歯を食いしばる。







「まずは一」


しかしやってきた衝撃はあまりに軽く、優しかった。
すぐに体勢を整え、再び江と正対した徐盛の眼に拳を握り、朗らかな笑みを浮かべている相手の姿が映った。


「お前…愚弄しているのか?」


声の調子がまた一段階下がる。
それも当然のことである。武人として、戦いの最中に敵に情けをかけられた。これほど屈辱的なことなどあり得ない。
その眼にさらなる殺意を湛えて、徐盛は江に射殺さんばかり
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