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呉志英雄伝
第五話〜調練〜
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い忠実な木偶人形など我が軍には必要ありません。欲しいのはそう、指揮官の意図をくみ取り、その場その場で常に最善を選択できる兵のみ」



ここまで言われて、女性は言葉を失う。反論したいが出来ない。感情が抗おうとしているのだが、理性が白旗を掲げている。



「本来なら兵士同士でやらせるつもりでしたが、気が変わりました。………為すすべのない状況に絶望を味わうといいでしょう。………圧倒的な力の前に頭を垂れるといいでしょう」



江はそう言いながら、調練場の蔵から大量の武器を持ち出す。


「あなた方にはこの長沙城内を逃げてもらいます。そして私があなた方を追います。武器の利用は自由、刻限である日没まで逃げのびるか、もしくは私を殺害するか。それがあなた方の勝利条件です」

『っ!?』


新兵達はまたもや驚愕させられた。
目の前の文官が自分たちに一対多の勝負を挑み、また勝利条件が己が命を奪うことと抜かしたのだ。とても正気の沙汰とは思え

ない。
女性もこの言動を不審に思ったのか、江に告げる。



「手加減は必要か?」


「あぁ、そうでしたね。さすがにこちらが得物を使ってしまうとあなた方を殺してしまいかねない。ということで『コレ』を使わせていただきます」



手に握られたのは少し太めの木の枝。
しかし剣を振り下ろされたらたちまちに折れてしまうような代物だった。



「あ、これだけでは足りませんでした。私を殺すことなど、あなた方には到底不可能ですので、私に『一撃』を加えた時点で勝利としましょう。…無論出来るのであれば殺してくださっても構いません」



冷たい笑みを浮かべた少年の言葉を聞いた新兵達はついに怒号を上げた。
いくら新兵とはいえ、自らの腕に自信がある者が多い。そんな中で目の前の男がぬけぬけと侮辱したのだ。到底許すことなどできない。



「くっ………いいだろう。やってやろうではないか」



そして先頭に立っていた女性も例外ではなかった。先ほどまで勝っていた理性がついに感情の波にさらわれてしまう。



「了解がとれたので…さぁ皆さん散ってください。私もしばらくしたら追い始めますよ」



合図を共に新兵達は素早く、江に対する殺意に満ち溢れた状態で長沙の街へと散っていった。



「さてと…」




その場には二人の人間が残されていた。



「おやおや、あなたは行かないので?」


「お前を殺しても勝ちなのだろう?たかが文官風情が、よく武人をコケにしてくれたな」


「なるほど、武人、ね。これは面白いですね。『文官』が『武人』を打ち倒す。滑稽過ぎて、喜劇にすら成りやしない」


「ふん
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