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一人では行かせない
第六章
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理恵の告白を見た、そのうえで。
 飛び上がらんばかりに喜んでいる彼女にこう言ったのだった。
「よかったわね」
「ええ、嘘みたいよ」
「嘘じゃないわよ、何なら頬っぺたつねるけれど」
「いや、それはいいから」
「じゃあいいわね、今日はね」
「お祝い?」
「あっ、お勘定は待って下さい」
 理恵はその告白の相手、親友の告白を受けてくれた彼に頭を下げてそれからまた言ったのだった。
「お祝いしたいですから」
「はい、わかりました」
 彼も笑顔で応じてくれた。
「もう一度ですね」
「飲ませて下さい」
「わかりました、お祝いで」
「麻美、そういうことでね」
 理恵はにこりと笑ってその麻美に言った。
「ここでまた飲むわよ」
「皆でなのね」
「一人じゃないからね」
 お祝いをするその時もだというのだ。
「皆でお祝いしましょう」
「うん、有り難う」
「お礼はいいから、じゃあね」
「飲もう、今からね」
「皆でね」
 他の同僚達も言う、そしてだった。
 皆で麻美を祝福した、麻美は一人ではなかった。
 その同じ店の二次会の中でだった、理恵は向かいの席で嬉しさのあまり一次会の時よりさらに飲み食いをする麻美にこう言った。
「一人で前に出られないならね」
「理恵達がいてくれてるのね」
「そう、だからね」
 それでだというのだ。
「怖がらなくていいから」
「それでなの」
「そう、これからも一人じゃないから」
 理恵も飲んでいる、その中での言葉だった。
「一人じゃ行かせないからね」
 最後にこう言うのだった、周りの同僚達も同じ様なことを彼女に言って祝福した、その酒好きだが臆病な彼女を囲んで。


一人では行かせない   完


                     2013・2・28
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