2 「竜鱗病」
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肩車をしてもらい、ふんふん鼻歌を歌いながら肩につくまでの長さになった凪の髪を弄りはじめた。
「…さて」
こほん、と咳払いをした真砂が表情を変える。ここにいても良いものかと顔を見合わせるリーゼロッテ達だが、ナギに良しとされてふたたびしっかりとソファに座りなおす。
「なぜ雪路の髪が白くなったかということですが、説明は医者である菖蒲さんの方から致しましょう」
「あれは、半年前だった。晩飯を食って、夜の稽古をしていた時だ。突然雪路が高熱で倒れた。理由は俺にもわからない。多分、何かの感染病だとその時は思った」
熱は三日三晩続いた。空気感染する恐れもあった為、ずっと菖蒲が一人で看病を続けていた。もちろん、マスクに白衣の医者の重装備である。
といっても、優秀な医師であることを自他ともに認めている彼ですら一体なんの病なのかすら分からなかったため、ただ栄養価の高いものと薬湯を飲ませ、額に絶えず冷えた手ぬぐいを載せることしかできなかった。正直、特効薬の無いまま40度の高熱を3日も出し続けた雪路は、このまま助かる見込みはなかった。
ところが、4日目の朝。菖蒲が目を覚ますとこれまでの熱が嘘みたいに下がっていた。そして、うつらうつらとしていた菖蒲が目を覚ました時には既に、
「雪路の髪は、その名の通り雪みたいに真っ白だった、っつーわけだ」
紅茶が運ばれてきた。静かになった部屋に、店主がそそくさと部屋を出ていく。
再び菖蒲が口を開いた。
半年間。行く先々でその病について、なんの情報もないところから調べ始めた結果、雪路がかかった病はどうやら“竜鱗病”と呼ばれるものだということがわかった。
エリザが首を傾ける。
「りゅうりんびょう?」
「竜の鱗の病、と書いて竜鱗病だ。名前の由来は単純、身体のどこかに鱗みたいな痣ができるらしい。雪路にもある。脇腹だ。そして、調べた結果わかったのが……」
「それは不治の病である、と」
ナギの言葉に少女2人がハッと息を呑む。
菖蒲が無表情のまま頷いた。真砂は悲痛な顔をし、凪のとなりに座った岬は唇を噛み締める。汀は凪の髪をいじっていた手を止めて凪の首にすがりついた。凪はそっとその手を撫でながら、菖蒲に続きを促す。
「なぜ、その病が発症するのかは不明。特に子供に多いというわけでもなく、女に多いとかいうわけでもない。ただキッカリ三日三晩の高熱が続き、それに耐え切れなかったものは死、耐えてもいつの間にか身体のどこかに浮かび上がった青い鱗の痣が、患者を苦しめる。はじめは軽い内出血程度の色合いの痣だが、だんだんその色は濃くなっていき、最終的には真っ黒に壊死したようになっちまうらしい。色が濃くなるにつれてわかるのは、その痣がどんどん深くなっていき、最終的には骨に達す
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