第八章 望郷の小夜曲
エピローグ 終わらない夜と迫る悪意
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」
両手を広げたアニエスが、セイバーの前に立ちふさがる。
強ばらせた顔のアニエスの視線の先には、先程と変わらない完璧な笑みを浮かべたセイバーが―――右手に抜き身のデュランダルを握りしめて立っていた。
「一体何をするつもりだっ!!」
「何を? 何もするつもりはありません。ただ……」
「た、ただ……」
ゴクリと喉を鳴らす。
「少し話しをしようかと」
「話し合いをするのに剣が必要かっ!?」
「交渉と戦争は似ているものです。そして交渉と話し合いは似ているものです」
「全然違うっ! 落ち着け! 今お前は混乱しているだけだっ!!」
「いえ、十分落ち着いています」
顔を左右に振るセイバー……相変わらずその顔には冷たい笑みが浮かんでいる。
しかしアニエスには見えていた。
金色の髪が掛かるその白い額に、太い血管が浮かんでいる事に。
ここで止めなければ、陛下に悲しい報告をしなければならないと確信したアニエスは、決死の覚悟でセイバーの前に立ちふさがるが、その足はじりじりと後ろに、士郎たちの方に向かって下がっていく。
「待て! 頼むから剣だけは鞘に収めてくれ! 剣は流石にヤバイ!!」
「大丈夫です。ちゃんと落ち着いていますから。だからそこを退いて下さい」
「退けるわけないだろっ! いいから落ち着けっ! 剣を収めろっ!!」
冷や汗を流しながら必死にセイバーを落ち着かせようとするアニエス。
絶対に退かないという意思がこもったアニエスの様子に、セイバーは足を止めると小さく溜め息を吐いた。
足を止めたセイバーに、アニエスの顔にホッとした顔が浮かび―――。
「ワタシハジュウブンニオチツイテイマスヨ?」
「嘘だッ!!」
ルイズたちの長い長い夜は終わったが、アニエスの長い夜は……まだ始まったばかりだった。
「っ、は、ぁ…はぁ……は……っあ……く、あ、あれほどの化物だったなんて……信じられない……何なんだあいつは」
月明かりも届かない森の奥で、シェフィールドが木に手を当て肩を上下に激しく揺らしている。
全身から吹き出る汗によりローブはグッショリと濡れそぼっていた。
息が落ち着くと、木から手を離すと背中を預けずるずると地面に座り込む。
「っ、あの男はやはり只者ではなかった。ガンダールヴなんて関係ない。本当に何者なのよ……っ、そう言えば……」
未だに肩を上下させながら、背にした木に後頭部を付けると枝葉で隠れた空を見上げる。
「あの男、あの弓を何処から取り出したの? ……魔法? でも、そんな素振りは見えなかった……一体……」
暫くの間黙り込んでいたシェフィールドだったが、小さく息を吐くとゆっくりと
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