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アンドレア=シェニエ
第三幕その八
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女に頼まれただけだ」
 彼はシェニエの手を固く握りながらマッダレーナに顔を向けた。
「彼女?」
 シェニエはそれにつられるように顔をそちらに向けた。
「あ・・・・・・」
 そこに彼女がいた。マッダレーナはシェニエに対して頷いて応えた。
「私は彼女に導かれたのだ。正しい道に」
「そうだったのか」
「私に礼は言わなくていい。言うのなら彼女にしてくれ」
「マッダレーナ」
 シェニエはそれを受けてマッダレーナに語りかけた。
「はい」
 マッダレーナもそれに応えた。
「有り難う。今は多くは言えない。けれど有り難う」
「はい」 
 この時彼女の心にある決意が宿った。
「ジェラール、やはり君に感謝する。君がいなくては彼女に今こうして会うことはできなかった」
「そうか」
 ジェラールはその言葉を謹んで受けた。
「この恩は一生忘れない。例え私が死のうとも」
 シェニエは神を信じている。だからこそ言える言葉であった。
「アンドレア=シェニエ」
 そこに兵士達が来た。彼に退場するよう促す。
「わかっている」
 彼は頷いた。そして兵士達に従った。
「ジェラール、マッダレーナ、最後にまた会うだろう。だが忘れないでくれ」
 彼の顔は紅潮していた。死なぞ全く恐れてはいなかった。
「私は貴方達と出会えたことを幸運に思う。貴方達は私の一生の最後の幸運だった」
 そして彼は裁判の場を後にした。昂然と胸を張ってその場から立ち去った。それは勝利者の行進であった。

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