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アンドレア=シェニエ
第三幕その三
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 ジェラールはそれを聞いて言った。
「彼女が来るかも知れない。シェニエを救いに」
「ええ」
「さて、その時どうするかだ」
 ジェラールはまた顎に手を当て考え込んだ。
「どうされるおつもりですか?」
「それは君には関係ないことだ」
「失礼」
「いや、いい。だが」
 ここで釘を刺すことにした。
「今の言葉は他言は無用だ」
「わかりました」
 彼は頭を下げた。
「ですがアンドレア=シェニエは大きな獲物ですよ。我々にとっても」
「そうだな。彼は今まで一貫して我々を批判してきた。真の革命ではないと」
「あげくの果てには王政よりも酷い独裁政治だと」
 彼にとってその言葉は全く心外なものであった。
「そうだな」
 ジェラールはそれに応えた。だが応えるその顔は少し曇っている。それが何故かは密偵にはわからなかった。
「ではすぐに戻りましょう。革命クラブへ」
「そうだな」
 こうしてジェラールは密偵に促される形で革命クラブに戻った。そこに彼の執務室があるのだ。本来は別のところに置くのだが彼はそこに置いていた。その方が彼は精神的に落ち着くからだ。
「革命の理念を一時たりとも忘れたくはない。だからここに少しでもいたい」
 彼はいつもそう言っていた。そしてそれに従いここに執務室を置いたのだ。
 執務室に入る。暫くして扉をノックする音がした。
「どうぞ」
 ジェラールは入るように言った。すぐに若い党員が入って来た。見ればようやく二十歳になったばかり位の美しい青年である。
「用件は何だね」
 わかっていたがあえてそう尋ねた。

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