第三十三話 少年期O
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う具合に卵かけごはんに向かって一心不乱にのめり込んだ少年。そんな執心する息子の様子を見ながら、こういうところはお母さんそっくりねー、と微笑ましそうにプレシアは卵かけごはんを作ってあげた。
いつも通り、テスタロッサ家はやはりどこかずれていた。
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そして次の日。学校では昨日出された宿題の発表会が行われていた。アリシアは自分が書いた用紙に描かれてある、大きな花丸に笑みを浮かべる。彼女の発表の後、お兄ちゃんが大好きなのね、と先生に褒められたのだ。お母さんとリニスたちにも見せなくちゃ、とアリシアは幸せな気分でいた。
「ここで注目してほしいのは、新鮮な生卵の甘みに醤油のコクが最も大切であることだ。だが、確かに他にも醤油の代わりに味塩をかける場合や麺つゆなどといった最高の組み合わせもある。そうこれは、1つの可能性を追い求めることは大切だが、新たな可能性を見つけ出すことも大切だと卵かけごはんが訴えてきているんだ!」
ダンッ、と黒板の前に立って熱弁する少年。彼の後ろには先日映像記録として撮った、様々な卵かけごはんの魅力を余すことなく公開している。あと無駄にクオリティーが高い。これを撮ったコーラルというデバイスが、師と仰ぐ誰かさんの影響であったり、マスターのおかげで向上し、趣味とかしてふっきれた盗撮スキルのおかげだろう。
「アツアツのご飯を用意し、真ん中をくぼませる。さらにそこに溶いた卵を注ぎ込み、ご飯全体へと万遍なく行き渡らせる。とろっとした黄色いじゅうたん。かき混ぜることで起こる、箸から響く軽快なリズムと濃厚な香り。まさに卵とご飯のハーモニー!」
少年の言葉はさらに力強いものとなっていく。引き込まれるクラスの子ども達。4時間目の授業ということもあり、先ほどから鳴り響く空腹という名の合唱。そして昨日のアルヴィンのように、どことなく冷や汗を流す担任の先生であった。
「想像してみてくれ。箸で1口掻き込む。口の中に広がるそのうまさ。止まらない食欲。それはまさに至高の1品。……だが、これだけではまだ終われない。こいつには最高の相棒たちがいる。共に掻き込むことで起こるシンフォニーはそれこそ―――」
たまたま1年生の授業を見学に来ていた校長先生は、その瞳から一滴の感動を流した。
それから数日後、学校の給食に卵かけごはんが出るようになったらしい。
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