第三十三話 少年期O
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いくつかあるため、見ているだけで楽しめたりする。だけどさすがにそれを試す度胸もお小遣いもないアルヴィンは、無難に日本のところから探していた。
「おや、アルヴィン君と……その子が妹君かい?」
「あっ、野球のお兄さん」
「やきゅう?」
食材コーナーの近くにあったお茶コーナーにて、アルヴィンたちはちきゅうやの常連客のお兄さんと遭遇した。仕事大好きで、同僚の方々から枯れていると20代で言わしめた彼の買い物かごの中には、山となっている紅茶パックたち。とりあえず身体的には潤っていそうだ。
「はじめまして、アリシアって言います。野球のお兄さんよろしくお願いします!」
「ご丁寧にありがとう。うーん、まぁ野球のお兄さんでいいかな。間違ってはいないから」
少し困ったように笑いながら、あだ名呼びOKの許可を貰う。事実大量の紅茶パックの隙間から見えるのは、野球のボールやグラブオイルなどの野球用品。さらにあまりに着こなし過ぎていて違和感がなかったが、彼が着ているのはユニフォームのようだ。
そんなアリシアの彼の第1印象は、紅茶と野球が大好きな優しそうなお兄さんとなった。ちなみにアルヴィンの第2印象が、好青年から完全に野球青年に変貌してしまったお兄さん。彼に野球を進めたのは確かに自分なので、微妙に罪悪感がよぎる。でも本人楽しそうだからいいか、と相変わらずの結果オーライ思考で納得した。
「しかしすごい野球グッズですね。試合とかもできそう」
アルヴィンは感心しながら男性の買い物かごの中を確認する。もともと趣味がなく、幼い頃から仕事一筋だったお兄さん。そんな時初めて触れた野球というスポーツに興味を抱き、そして趣味へと昇華されたのだ。
趣味は人の心を豊かにする。さすがに野球は地球のスポーツなので、ミッドではできないだろう。だけど、ちきゅうやで野球を観戦したり、キャッチボールぐらいなら一緒にできるかな、とアルヴィンは微笑ましそうに想像していた。
「あぁ、ありがとう。実際、今度の休みに対戦するからね」
「…………え?」
アルヴィンの顔が今日初めて引きつった。それに気づかず嬉しそうに話を進めるお兄さん。アリシアは珍しい兄の表情を逃さずにスケッチする。各自本当に自由である。
対戦する。アルヴィンの中でこの単語がリフレインする。今までの会話の流れから対戦内容は野球だろう。だけど野球には9人のチームメンバーと、さらに対戦する相手が必要なのだ。人数は多少減ってもできるが、少なくとも1人ではできない。それはつまり、野球ができる仲間がいたということになる。
「最初は大変だったよ。やってみようと思っても、ミッドでは野球がほとんど知られていなかったからね」
だが、彼は諦めきれなかった。賛同者が得られるのかはわ
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