ブショー、侵入する。
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そして、夜。
「……来てくださいましたね」
「ああ。まさかほんとに開いてるとは思わなかったけどな」
「……嘘だと思ったのですか?」
「当たり前だろう。あれを二つ返事で信じるほうがおかしい」
「でも……あなた様は来ていただいた……!!」
オイチはそう言って胸に手を当てていた。
「……ま、ああいうことは断りきれない性分でね……」
カズヒデもそれを見てどことなく照れていた。
「……で? なんの話だ?」
そう言ってカズヒデは軒先に腰掛けて、言った。
「……私の兄を誰だか知っていますか?」
オイチは恐る恐る尋ねた。
「んにゃ、わかんないよ。有名なブショーかい?」
「……そう」
オイチはいったん、息を整えて、言った。
「……ノブナガ。それが、私の兄の名前」
それを聞いて、カズヒデにまるで頭に電撃が落ちたような衝撃が走った。
「ノブナガ? ……それが、君の兄?」
そうカズヒデが言うと、オイチは静かに頷いた。
「そうか……!! まさかこんな近くにあるなんて……!!」
そう言うとカズヒデは引き攣りながら笑った。
「あ、あの……? どうなさいましたか?」
「僕はその君の兄に会いたかったんだよ! ノブナガに!!」
カズヒデはそう言うと立ち上がり、拳を月あかりに照らすように掲げた。
**
「なにかそこにおりますのかな? オイチ様」
不意に声が聞こえ、オイチとカズヒデは振り返った。
「おやおや、曲者ですねえ。まさかこんなところまでこられるとは……、目的はなんですかねぇ?」
そこにいたのは、中肉中背の男だった。隣にはゴウカザルがいた。
「……誰だ……?」
「……おや、ここが誰の城かもわからずにはいられた、のですか?」
男はカズヒデの言葉を聞き、冷たく笑った。
「ま、いいでしょう。自己紹介するのがブショーの性。私は、ヒデヨシともうす。そしてここにいるのが相棒のゴウカザルだ」
そう言うと隣にいたゴウカザルはひとつおおらかに鳴いた。
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