第一部
序章 〜桃園の誓い〜
弐 〜出会い〜
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らも同意とばかりに頷いた。
「ふふ、私も一度決めた事を覆すつもりはありませぬぞ、主?」
「そうなのだ。お兄ちゃんが駄目と言っても、鈴々はついていくのだ」
「ご主人様。これでもまだ、皆の想いを無にされると仰せで?」
五人は、真剣そのものだ。
私があくまでも拒めば、この場で腹を切りかねぬ雰囲気すら漂わせている。
「……どうあっても、私に付き従うと申すのだな?」
「愚問ですよ」
「愚問ですねー」
「うむ、愚問ですな」
「当然です」
「にゃはは、もう諦めた方がいいのだ」
私には、近藤さんのような度量はない。
だが、今ここにいる事も、天運なのであろう。
ならば、それに逆らうだけ無駄という事か。
「……良かろう」
すかさず、星が腰を上げた。
「では、早速誓いの杯と参りましょうぞ」
「そうだな。この村はずれに、見事な桃園がある。そこなら良かろう」
「ではでは、準備にかかりましょう」
誓いの杯?
そして、桃園……?
「ま、待て郭嘉!」
「歳三様。稟、です」
毅然と、私を見返してくる。
「し、しかしな……」
「一度真名を預けた相手から、姓名でのみ呼ばれるというのは逆に恥辱なのです」
「……わかった。じゃあ、稟」
「はい」
「この村だが……。何という村だ?」
「は。楼桑村です」
……なるほどな。
劉備が見つかっていない訳ではない。
……どうやら、私が劉備に相当する立場、という事らしい。
「我ら六人っ!」
「姓は違えども、姉妹の契りを結びしからは!」
「心を同じくして助け合い、みんなで力無き人々を救うのだ!」
「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも!」
「願わくば同年、同月、同日に死せんことを!」
「ここに誓うのですよー」
「…………」
「ご主人様。あなたが最後ですよ?」
関羽……いや愛紗が、白い目で見てくる。
「し、しかしな……」
まさか、桃園の誓いをやる事になるとは。
「ま、良いではないか。誓いには変わらんさ」
「星!」
「……乾杯!」
こうして、私は別天地で、新たな一歩を踏み出す事となった。
思いもよらぬ形と、そして出会いから。
我が諱、義豊。
これは皆には明かさずにいるが、誰もその事を口にはせぬようだ。
ならば、このまま斃れるまで秘めておくのもまた一興。
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