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アンドレア=シェニエ
第二幕その九
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第二幕その九

「何かご不満でも」
「いえ」
 不満なぞなかったただその申し出が信じられなかったのだ。
「本当でしょうか」
「私は嘘は言いません」
 彼はそう言い切った。
「この命にかえて貴女を御守りしましょう」
「シェニエ様・・・・・・」
「その命預けて下さいますか」
「喜んで」
 マッダレーナはコクリ、と頷いた。
「よかった、ではこれから私は貴女の為に全てを捧げます」
「全てをですか」
「ええ。では行きましょう、ここは危ない」
「はい」
 二人はその場を去ろうとする。シェニエは辺りを慎重に探る。
「大丈夫です、行きましょう」
 シェニエが先に行く。そして進んで行く。やがて二人の行く先に誰かが姿を現わした。
「ルーシェか!?違うな」
 シルエットを見てすぐに悟った。杖を持つ手に力を入れる。
「やっとお会いすることができた」
「誰だ、君は」
 シェニエは彼の名を尋ねた。
「そういう君こそ誰だ」
 その者は逆にシェニエに問うてきた。
「私はジェラールだ」
「ロベスピエールの側近のか」
「如何にも」
 ジェラールはそう言ってこちらに歩み寄ってきた。
「君が誰だか知らないが」
 どうやらシェニエだとは気付いていないようだ。
「私はそこにいる女性を保護する為にここに来た」
「保護!?」
「そうだ。その人は今危機にある。私はそれを救いに来たのだ」
「面白いことを言う」
 シェニエはややシニカルに言った。
「彼女に危機を与えているのは君達ではないか」
「私は違う」
 ジェラールは怯むことなく言った。
「マッダレーナ」
 そして彼女の名を呼んだ。
「私のことを覚えておられるでしょうか」
「貴方のことを」
「そう、かって私は貴女の家にいた。そう、あの頃は卑しく使われるだけだった」
「まさか」 
 マッダレーナはその声にハッとした。
「貴方はまさか」
「心当たりが」
「はい」
 シェニエの問いに答えた。
「覚えておられますか、あの時の宴の最後を」
「ええ。確か使用人の一人が民衆を連れてその場を立ち去った」
「そう」
 ジェラールはそれを聞き満足したような声を出した。
「それを知っている君も貴族だな。だがその品性は決して卑しくはない」
 ジェラールにとって貴族とは全て卑しく、排他されるべき存在であった。だからこそ彼は革命に参加したのだ。
「ジェラール、一つ忠告しておこう」
「何だね、騎士殿」
「君はロベスピエールのことをよくわかっている筈だ。おそらく私よりも」
「それが何か」
 ジェラールはピクリ、と眉を顰めた。
「彼は危険だ。あれでは王政より遥かに悪い」
「言っている意味がよくわからないが」
 彼はあえてとぼけてそう答えた。
「誤魔化す必要は
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