GGO編
episode2 音無き決戦
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するか。
一瞬の逡巡。
その判断基準は、一つ。
(ソラの望む、『勇者』なら、あくまで勝負に向かうはず)
一瞬の判断の後、俺は既に黒煙を上げつつある脳の神経回路の回転をさらに引き上げた。
◆
スナイパーライフルを、ゆっくりと構える。そこに、余計な緊張は無い。
既に完全なスナイパーである彼は、狙撃の際の着弾予測円の心拍連動システムに対応するために、己の鼓動を完全に制御していた。普通の人間であればかなり難しいことなのだが、あいにく彼は普通の人間では無い……言い換えれば、異常者だ。
鼓動は、一定のリズムのまま。
しかし彼の精神は、紛れも無く高ぶっていた。
かつて伝説となったデスゲーム、『ソードアート・オンライン』において、自分に辛酸を舐めさせた二人のプレイヤー。一人は言うまでも無く、『黒の剣士』、キリト。何度となく彼や彼のギルド『笑う棺桶』の邪魔をした、いけ好かない気障な片手剣使い。
(そして、もう、一人……)
情報屋、シド。
あの、忘れもしない忌わしい夏の日に、自分の刺突剣と腕を断ち切った、クモの様に長い手足を持つ《体術》使いの男。もともと気に食わなかった為に奴の女をしっかり殺してやったは良かったのだが、まさかあんなしっぺ返しを食うとは思ってもみなかった。
あの日以来、彼の頭は憎悪と苛立ちとで狂いそうだった。
もっとも、もともとの殺人者の彼を、正常とすれば、の話だが。
(だが、それも、今日まで、だ……)
ゆっくりと、射線で駆け抜ける細い体を追い続ける。
今対峙しているこの男は、間違いなくシドだ。あの特徴的な疾走姿勢、見間違うはずもない。まさかこのGGOでトッププレイヤーとなっているとは予想外だったし、爆弾と銃火器を使うせいで今まで分からなかったが、こうして相対すればその正体は明らかだった。
(クク。……いい、気味だ……)
心の中で、ほくそ笑む。
なんと今日は良い日だろう。
シドと、キリト。かつて自分を地べたに這い蹲らせた二人を、今度は自分の手で地面を舐めさせてやれる。キリトに至っては、目の前で「仲間を殺される」という演出付きだ。確かに二人ともこのBoB大会に出場するくらいには強いが、自分や《死銃》の力を持ってすれば倒すのは容易い。
なにせキリトの主兵装である光剣の《カゲミツG4》は、自分が今身につけている《耐光学兵器反射フィールド展開アーマー》でその威力の大半を消失させられる。あっけにとられた所をこの《沈黙の暗殺者》で吹き飛ばすか、銃身の下に取り付けた『奥の手』で貫いてやればいい。
(さあ、死ね……)
視線の先で逃げ惑うように駆ける影を、スコープに納め
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