GGO編
episode1 その手に持つ兵器は
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……そんな高難度ダンジョンで、「血塗れ雑技団」が前線を繰り広げている。
誰もが信じないであろうその戦績の立役者は、一人のコンバートプレイヤー。
彼が操った、「足音で敵の方向を当てる」という離れ業のおかげだった。
◆
戦線は、正直押されていた。
当然と言えば当然だ。明らかに求められるレベルが足りていない。クモの群れの掃討にかかる時間が攻略に想定されている時間よりも長い為にどんどん数が増えていくし、肝心のボスモンスターについては殆どダメージが入っていない。対してこちらの前衛三人のHPは着実に減っており、もう長時間持ちそうにないのは明白だ。
「くっ、一旦下がります。『D』、閃光弾と発煙弾を! 『G』はペイント弾!」
「りょーかいっ!」
「承った!」
前衛が戦線を支えきれずに後衛のシノンやカメにまでクモの糸が纏わりつき始めたのを見て、とうとうミオンが焦りを浮かべて一時撤退の指示を出す。応えたラッシーが両手に持った手榴弾を放り、グリドースが特殊弾を装填したショットガンを壁に撃つ。生じた煙と閃光がMobの目をくらませ、一瞬後に壁に咲いたペイント弾に惹き付けられていく。
ほんの十数秒だけしか効果は無い、こちらの隠蔽と敵の惹き付け。
その効果時間を逃さずに走り出す皆を追って、シノンも《礼賛Y》を必死に背負って駆け出す。
(くっ……重いっ……)
が、かなりの大口径ライフルだけあって、その重みはシノンの肩にずしりと圧し掛かった。
いつもよりも、はるかに足の動きが鈍ってしまっている。
十キロを超えるその狙撃銃はぎりぎり重量制限内とはいえ、限界近い重しを抱えての疾走は慣れが必要となってくる。そんな経験などまだ殆ど無いシノンは、走ろうとして躓き、よろけてしまった。
(っ、……!)
取り残されてしまうかと焦るが、
「ヌむむっ、ワシは走るのは苦手なのじゃーっ!」
「おら、時間はちゃんとあるから走れ爺さん!」
シノンの更に後ろでカメ爺さんが悲鳴を上げていた。
ごつごつとした重装備のアーマーと巨大なプラズマランチャーは完全に重量オーバー、必死に足を動かすがまともに走れてはいないカメさんを、後ろから殴り飛ばすようにラッシーが押してなんとか壁際まで辿り着かせる。煙幕とペイント弾での効果によって残された時間は、もう数秒。
(どうするの……?)
一秒も無駄にできない状況。
沈黙したシノン達の前で、まず口を開くのは、ミオン。
一分の隙も無く管制をこなす司令塔は、焦りながらも冷静さを保っている。
「単刀直入にいいます。ラッシーさん、《カノープス》を使ってください」
「……しか、ねーか……。しゃーない、ツカサ!」
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