GGO編
episode1 その手に持つ兵器は
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手に抱えたアサルトライフルの狙いを俺の方へと向け直す。表示される赤い弾道予測線は、俺の体の各所を綺麗に捕えており、さすがの俺でも全弾回避は不可能だ。もう長い付き合いになる《軽業》スキルで転がる様に緊急回避するが、それでも数発が体を掠めて、HPがいっきに二割ほども減少する。
だが、
「うらぁっ!」
「ガガギッ!!!」
突進で距離を詰め、転がった勢いを生かしてのグレネードの投擲。放たれた拳大の炸裂弾が激しく弾けて、その体が半球形の閃光に包まれた。グレネード系はボスにはダメージが薄い為、そのまま突進、光で一瞬こちらを見失った敵の僅かな隙にその体に追い撃ちの跳び蹴りを叩きこむ。銃器の世界だけあってSAOやALOでの体術と比べると悲しくなるくらいのダメージ量がそのHPを減らすが、一応「特攻して惹き付け」の役はちゃんと果たした。
一瞬でも怯み効果を与えれば、この機械道化師……『ブリンク・ザ・クラウン』は一旦は攻撃を止め、マントの効果で再び姿を消して次の機会を狙う。
(ふうっ……っと!?)
突っ込んだ直後に一息つく間もなく、耳元からのミオンの声が響く。
『すぐ戻ってください、『D』、右の大グモは単体ではなく二体でした。AGI壁がツカサ一人では足りません、すぐに援軍に行って特攻してください!』
「まじかよっ、もたねえぞ!?」
再びの振り回しの指示に、舌打ちしながら走り出した。
◆
後々攻略サイトでは、『蜘蛛と道化師のワルツ』と呼ばれることになる、この最深部のボス戦。ボスである『ブリンク・ザ・クラウン』の攻撃手段は高性能アサルトライフルをはじめ煙幕や毒ガスとなかなかに豊富だが、その中でも最も特徴的な攻撃手段は「頭上に向けて銃を乱射し、そこに張り付いている大グモを撃ち落とす」というものだった。
これによってこのボス戦は、「撃たれて怒り狂った大グモと、その背中から湧き出る小グモの大群を相手にしつつ、消滅を繰り返す道化師を狙う」、という勝負になる。
クモの特徴たる糸の波状攻撃は、最初は広い円形広場を徐々に埋め尽くしていって足場を制限し、落下する大グモの踏み潰しダメージを避ける為にプレイヤーは移動を繰り返さなくてはならないという、地下ダンジョンでも有数の高難易度戦闘。
道化師もその『光湾曲迷彩』で十秒も経たずに姿を消すせいで、クモの襲撃に耐えながら全方位を監視し続ける必要もある。その前触れ無く現れる敵を正確に見つけ出し、数秒の間に狙撃できるスピードが、攻略の鍵。
結果、この「雑技団」の後もかなりの長い期間攻略されなかったダンジョンであり、高レベルスコードロンが何とか勝率五割を保てるようになったのは、彼らの戦闘から数カ月後、もう秋が終わろうかという頃となった。
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