第八章 望郷の小夜曲
第八話 月下の口づけ
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のであった。
―――何者かによって進行を止められた。
それを聞いた時、確信した。
……士郎だと。
ロサイスに向かうアルビオン軍を止めたのは……士郎に違いないと。
間違いないと判断したのは、情報屋から手に入れた情報の一つを手に入れた時であった。
情報屋もまた、アルビオン軍を止めた者については情報を掴みきれていないのか、わたしは様々な情報屋から情報を手に入れたが、共通しているもの等は殆んどなかったが。数少ない共通したものの中の一つに、アルビオン軍を足止めした者と戦っている最中、何時の間にか数え切れない程の剣が突き立った荒野にいたというものがあった。
無限に剣が突き立った世界……それを聞いた時、わたしはアルビオン軍を止めたのは士郎に違いないとハッキリと思った。
何故かは分からない。
だけど、わたしは疑いの余地なくそれを信じていた。
七万のアルビオン軍を士郎が止めた。
だがそれは、士郎の死を予見させるものでもあった。いくら化物じみた強さを持つ士郎でも、七万の軍を相手に無事にすむわけがない。それどころか、死んでいてもなんらおかしくはない状況である。
しかし不思議なことに、わたしは士郎が死んだとは欠片も考えてはいなかった。理由はない。本当になかった。ただ、生きているという確信だけが何故かあった。
そして、それを感じているのは、わたしだけではなかった。
キュルケも、シエスタもそう感じていると……。
偶然ではない。
わたしの勘が、そう告げていた。
だから、わたしは慌てて士郎を探しにアルビオンに向かうことはなかった。
……ルイズはアルビオンに向かうための船はなく、行くことは出来ないと言っていたが、蛇の道は蛇と言うぐらいだ。裏の世界で生きていたわたしは、行こうと思えば何時でもアルビオンに行くことが出来た。
でも、行かなかった。
士郎が生きている。
その確信があるから行かなかったというわけではない。生きているからといって、無事と言うわけでもないかもしれないのだ、一刻も早く士郎の下に行きたい思いが確かにあった。だが行かなかった。
理由はルイズだ。
士郎が死んだと思い込み、部屋に閉じ込もったルイズ。それを放ったらかしにして出ることが、わたしにはどうしても出来なかったのだ。
とは言え、あの状態のルイズを説得する自信はなく、下手に刺激して自殺されるのもと考えているうちに、シエスタがルイズを部屋から引っ張り出してくれた。さらに、あれよあれよと言うまに二人は士郎を探しにさっさと学園を飛び出していった。
あれは本当に急で、慌てて追いかけたおかげで折角準備していたものを置いてきてしまった。
全く何でここまで気を配っているのか……
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