第八十七話
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う。だが俺はもった方だと思うけどね」
カンピオーネ。…神を殺した者に送られる称号だろう。
英語ならチャンピオンだろうか。
「そうでしょうか…」
「格上の存在に命をベットし続けたんだ。いつかはそれを支払うときが来るさ」
だから俺は極力関わらないように生きてきたと彼は言う。
「今のあの人は失ったものを取り戻そうと必死です。その為に回りにどれ程の被害が出ようが躊躇う事が無い。もはやあの人はその心まで魔王になってしまった…それを見ているのは余りにも辛い。諌めるはずのリリアナさんや恵那さんまで護堂さんに協力をしています…もう頼れるのは貴方様達しか居ないのです…どうかあの人を止めてください」
どうか、と頭をこすり付ける勢いで下げる女性の懇願に彼もついに折れた。
いや、彼女の懇願だけでは頷かなかったかもしれない。
しかし、事態が彼の住むその街、その国を脅かすのであれば彼も出張る覚悟を決めたらしい。
彼はその女性の頼みを聞き、その誰かを止める為に立ち上がった。
ビルが立ち並ぶ市街地の真ん中に二人の青年が居る。彼が止めてくれと頼まれた青年とついに対峙したのだ。
彼と、彼に対峙する青年の実力差は歴然だった。
地力が違うし、研鑽した技量の差がある。しかし、そんな彼我を覆さんばかりに食い下がった青年には鬼気迫るものがあった。
自身の命を燃やし尽くす勢いで彼に挑みかかる青年。しかし、死闘の末に軍配が上がったのは彼の方だった。
組み伏せて最後通告をする彼の言葉を青年は黙って聞いていた。
「何か言い残す事が有るか?」
「俺の時間を巻き戻すのか?」
「ああ。カンピオーネになる前までお前を巻き戻す。そうすれば今度は自然と年老いてちゃんと死ねる」
「そう…か。記憶はきっと残らないんだろうな…」
「ああ。お前はもう一度人生をやり直す事になる。カンピオーネになる前のお前になら簡単な暗示も抜群に聞くだろう。お前は何も疑問を感じないままに生活する事になるだろう」
「なぁ、あんたに俺を止めさせたのって…」
「祐理さんだ。彼女はこのまま壊れていくお前を見ていられなくなったんだろうな」
「そう…か」
青年は一息はぁと吐き出すと言葉を紡ぐ。
「悪い。あんたには損な役回りを押し付けてしまった」
「全くだ…もういいか?」
と最後通告をする彼に青年はああと答えるとゆっくりと目を閉じた。
目を閉じた青年に彼は何かをしたのだろう。見た目は殆ど変わっていないが、その体から感じられた力強さが失われている。
そんな青年の体を彼に青年の討伐を依頼した彼女に引渡し、彼はもの悲しげに去っていった。
それから早回しのように時間が過ぎ去っていく。
文明
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