第八十七話
[5/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
絆が彼を支え、ついに常勝無敗のままに戦争は終わる。
いや、終わったわけではない。彼の国民は彼が引き連れて逃げ出したのだ。
大量破壊兵器の閃光を目の当たりにし、ついに戦争が個人の力の範疇を離れたと悟ったのだろう。
国民を連れて逃げた彼は、新しき国を作り、その国民が自分たちで考え、生活できるように誘導するとそっとその国を去った。
そんな彼の人生を見て、わたしは思う。
ああ、彼は間違いなく英雄なのだと。
…
…
…
バサリと布団を跳ね上げる。
「……何が英雄としての物語を持っていないよ…ちゃんとあなたは英雄じゃない」
誰も居ない室内で誰も聞いていないのを確認して悪態を吐く。
その呟きはわたし以外居ない部屋で漏れることなく消えていった。
◇
昨夜ついに一騎のサーヴァントが脱落した。
まぁ、殺し合いである以上どちらかが死んでしまうのは仕方ないが、母さんには困ったものだった。
確かに引き分け続きだと流石のイリヤも手を抜いているのではと不審がるからしょうがなかったと言うのもあるのだが、このまま推移を見守ると言う選択肢が霞んでしまったのは痛い。
まぁ、最初から俺達が居るせいで未来がどうなるかは分からないのだけれど。
現状を打破する考えが浮かばないまま、夜の冬木市の新都をうろつくと、そこにはサーヴァントの残り香が立ち込めていた。
意識しなければ分からないような、ほんの微かな血の匂い。
繁華街から少し入った路地裏は街頭の明かりも届かないのか暗く何かおぞましいものが潜んでいそうな気配を漂わせる。
「何か居るわね」
と、イリヤが言う。
「サーヴァントだろうな」
「そう。それじゃ行きましょう」
イリヤを守るように進むと、闇の中で何者かが何かをすする音が聞こえる。
目を凝らすと長身の女性がOL風の女性の首筋に牙を立て、その流れる命の滴りをすすっていた。
眼帯で両目を隠した彼女はおそらくライダーのサーヴァント。
ライダーは支えていたOLの体をほうり捨て、此方を油断無く睨む。
「サーヴァントとマスターですか」
「ええ。あなたは何のサーヴァントかしら?」
「ライダーのサーヴァントです。そちらは」
「私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。そして私のサーヴァントのチャンピオン」
俺は視線だけでイリヤの言葉を肯定する。
「イレギュラークラスのサーヴァントですか」
ライダーのサーヴァントは油断なく上体をかがめていつでも蹴りだせるような態勢だ。
彼女の正体は、とそこまで考えた時、体の制御が突如として俺から奪われた。
「悪いな、アオ。そいつは妾の相手よな」
と、すでに俺は
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ