第八十七話
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防になるでしょうね。私があなたの秘剣を制するか、もしくはあなたの前に屈するか…」
ゆらりとアサシンが横一文字にその長い刀を構える。
対するチャンピオンも気を引き締めて必殺の意気込みだ。
ここまで時間の掛かった戦いも、決着はほんの一瞬だった。
先に動いたのはチャンピオン。それを待ち構える形で先に刀を繰り出したのはアサシンだ。
「秘剣…ツバメ返しっ」
一瞬で三方向の斬撃が放たれる。
「御神流奥技の極 閃っ!」
対するチャンピオンの斬撃は一条。
ドーンと何かがぶつかる音が響き渡る。
「見事だ…これほどの剣士と死合えるとはな」
山門に打ち付けられたアサシンには致命傷の刀傷が刻まれ、手に持っていた刀は三つに砕かれ散らばっていた。
おそらく三方向からの斬撃をチャンピオンは一刀で全て叩き折ったのだろう。最後は武器の強度が物を言ったのかもしれない。
「いいえ、それは私の言葉よ。あなたほどの剣士と戦えた事を誇りに思うわ」
「そうか…浮世の夢と言う儚い時間であったが、なかなかに楽しい戦いだった…もう思い残す事も無い」
スーッとアサシンの体が消えると、彼の魂がわたしの中に入って来たのを感じた。
「うっ…」
アサシンの魂が入って来た事でわたしの中に異物感が押し寄せる。…でもまだ大丈夫。まだ、人の機能を阻害するに至らない。
「イリヤ?」
いつの間にか男の姿に戻ったチャンピオンがわたしの体を支えてくれている。
「ううん、なんでもない。それより中を調べましょう。アサシンの口ぶりだと他のマスターと手を組んだと言う感じだったから、中に他のサーヴァントが居るかもしれないわ」
「…了解」
わたしの身を案じてくれているのだろうけれど、チャンピオンは何も聞かずにわたしを連れて山門を潜った。
…結局そこにサーヴァントがいた痕跡は有るものの、サーヴァントの気配はなく、朝日が昇る前に城へ着くべく帰路に着いたのだった。
…
…
…
夢を見ている。
彼は戦乱の世の中にその生を受け、王子と言うその立場ゆえに戦場に立ち続けた。
彼自身が王に成ってからはさらに戦いへと彼を駆り立てた。
剣と盾を持ち、魔法が飛び交う中で同胞と、それよりも倍する数の敵が彼の前で次々と倒れていく。
戦いたいわけではなかった。しかし、戦わずに隷属させられるのは彼の民達が望まなかった。
彼は望まれるだけ王として責務を果たしていた。彼が道を踏み外さなかったのは彼を支えてくれる人達が居たからだ。幾度戦場に出ようと死なずに戻ってくる彼の同胞が居たからだった。
彼女達だけは決して彼の側を離れず、ともに歩み、そして強かった。
彼女達の思いが、彼女達との
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