第一章 土くれのフーケ
第九話 デルフリンガーとの出会い
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たまた貴族とはね」
「ねえご主人」
主人の視線を感じたキュルケは、殆んど条件反射に髪をかきあげると色っぽく笑った。むんっ、と溢れかえるような色気が一気に吹き上がり、年甲斐なく店主は思わず顔を赤らめる。まるで真夏の熱気のように色気だ。
「今の貴族が来たでしょ。で、その貴族が何を買っていったかご存知? 勿論覚えていらっしゃるわよね」
「へ、へえ。剣でさ」
「やっぱり剣ね……で? それで一体どんな剣を買っていったの?」
「へえ、ボロボロの大剣を一振り」
「ふぅん。やっぱりボロボロの剣を―――ってボロボロぉっ?!」
店主の言葉に目を丸くするキュルケ。半開きになった口元から『ボロボロ、ボロボロ』と何処其処のジャンキー染みた様子を見せる。
「……ボロボロって、流石にそれは……? はっ!? もしかして何かの隠語? ……でも、それだと。それとも本当にボロボロ……いやいやそんな、まさか。ね、ねぇ、そのどうしてその剣を買っていったかの理由を聞いてたりした?」
「さあ、なにやら気に入ったらしとか以外は」
「そう……」
ボロボロの剣……なら、私がもっとイイ剣を買ってあげると喜んでくれるかしら?
店主の説明を聞いたキュルケは自分の胸元を凝視している店主を見て考えた。
この男なら色気で釣って安く買い叩けるわね―――と。キュルケはそうして宛然と笑って店主に話しかけた。
その後、新金貨四千五百枚もする剣をたった千枚で買取り、悠々と寮にもどるキュルケの姿と、色気に溺れ大損をし、店をそうそうに閉めて酒を浴びるように飲む店主の姿があったそうな。
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