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剣の丘に花は咲く 
第一章 土くれのフーケ
第九話 デルフリンガーとの出会い
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にそうだろう。
 だが、違う。
 彼女たちの安全を確保するのは魔法ではなく―――一匹のドラゴンであった。
 落下する二人を受け止めると、青い身体のウィンドドラゴンが空へと向かって飛び上がる。
 
「いつ見ても、あなたのシルフィードはほれぼれするわね」

 キュルケが突き出た背びれにつかまり、感嘆の声をあげる。
 そう、タバサの使い魔はウィンドドラゴンの幼生なのであった。
 タバサから風の妖精の名を与えられた風竜は、寮塔に当たって上空に抜ける上昇気流を器用に捕らえ、一瞬で200メートルも空を駆けのぼった。

「どっち?」

 タバサが短くキュルケに尋ねる。タバサの問いに、キュルケは顎に指を当てて思案すると、『あっ』と何かに気付いたように小さく声を上げた。

「―――わかんない……慌ててたから」

 タバサは別に文句をつけるでなく、自身の使い魔であるウィンドドラゴンに命じた。
 
「馬二頭。食べちゃダメ」

 ウィンドドラゴンは短く鳴いて了解の意を主人に伝えると、青い鱗を輝かせ、力強く翼を振り始めた。
 高空に上り、その視力で馬を見つけたのである。草原を走る馬を見つけることなど、この風竜にとっては容易いことであった。
 自分の忠実な使い魔が仕事を開始したことを認めると、タバサはキュルケの手から本を奪い取り、尖った風竜の背びれを背もたれにしてページをめくり始めた。





 トリステインの城下町を、士郎とルイズは歩いていた。
 魔法学院からここまで乗ってきた馬は町のモンのそばにある駅に預けている。
 
「シロウって、本当に何でも出来るね」
「そうか?」
「そうよ、まさかあんなに馬に乗るのが上手いなんて。どこで習ったの?」
 
 ルイズの問いに士郎は、右手で頬を掻きながら昔を思い出すように青空を仰いだ。

「そう、だな。あれは何時だったか。まあ、とある人に教えてもらってな」
「……ふーん。でっ、どうせその人も女の人なんでしょ」

 その言葉に士郎は苦笑いしながら頷いた。
 
「まあ、否定はしない。ちょっとした諸事情で執事の仕事をしていた頃があってな。その時に仕えていた人に教えてもらったんだよ」
「……何で執事?」

 その言葉に士郎は渋い顔をして唸った。
 
「……まあ、払いが一番だったからな。それを見て勝手に応募した奴がいたんだよ」
「そ、そう。た、大変だったみたいね」
 
 ルイズの困惑した顔を見て、士郎は苦笑いして過去を思い出した。
 
 ……あの頃はちょっと思い出したくないことが多いな。執事を辞めさせる辞めさせないで凛と喧嘩して時計塔を半壊させるわ。酒に酔って二人してロンドン橋を落とすわ、婚約を破談にするために俺を恋人役にして相手と決闘をさせるわ……あ
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