第一章 土くれのフーケ
第九話 デルフリンガーとの出会い
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。今から出かけるわよ! 早く支度をして頂戴」
突然の要求に対し、タバサは短く己の主張を告げる。
「虚無の曜日」
それで十分であると言わんばかりに、タバサはキュルケの手から本を取り返そうと手を伸ばす。それに対しキュルケはその長身を利用し高く本を掲げた。これだけで背の低いタバサには魔法を使わなければどうすることも出来ない。
「ええ、わかっているわよ。あなたにとって虚無の曜日がどんな日だか、あたしは痛いほどよく知ってるわよ。でも、今はね、そんなこと言ってられないのよっ!」
いつも以上にハッスルしている友人の姿に、思わずタバサは首を傾げた。
「ああ、そうね。説明しないと。ほら、ルイズの使い魔にシロウって男の人いるでしょ! その人が今日、あのにっくきヴァリエールと出かけたの! あたしはそれを追って、二人がどこに行くのか突き止めなくちゃいけないの! わかった?」
キュルケが口にした士郎と言う名を耳にした瞬間、タバサの目に鋭い光が過ぎった。
―――衛宮士郎。
只物ではない雰囲気を醸し出しながらも、料理が上手でルイズの世話を甲斐甲斐しくしている不思議な人物。
“ドット”とは言え貴族であるギーシュを手玉に取りながら、その実力は未だ計り知れず未知数。
同年代―――否、歴戦の戦士すらも超える修羅場をくぐり抜けてきたタバサでさえ、その真の力を見極めることが出来ないでいた。
「出かけたのよ! 馬に乗って! あなたの使い魔じゃないと追いつかないのよ! お願いだから助けて!」
キュルケはタバサに泣きついた。自分には無い巨大な胸に挟まれながら、タバサはのろのろと頷く。
自分の使い魔じゃないと追いつかない。
なるほど、と思った。
タバサはもう一度頷く。
キュルケは友人である。友人が自分にしか解決できない頼みを持ち込んだ。ならばしかたがない。面倒だが受けるまでである。
それに……。
―――彼のことも気になる。
タバサは窓を開けると、空に向かって口笛を吹いた。ピューっと、甲高い口笛の音が、青空に吸い込まれる。空へと消えていく口笛の音を追いかけるように、二人は窓枠によじ登ると一気に外へと身を投げ出した。
ちなみに、タバサの部屋は五階にある。
何も知らない人間が見たら、おかしくなったとしか思えない行為である。
タバサは、外出の際あまりドアを使わない。何故ならばこちらの方が断然早いからだ。確かに階段を一段一段降りるよりも、窓から一気に落ちる方が断然早いだろう。だが、普通はしない。何故ならば死ぬからだ。五階から落ちればどんな受身の達人であれ重傷を負ってしまうだろう。
だが、二人は何の躊躇もなく窓の向こうへと身を投げ出した。
何故?
魔法を使えるから?
確か
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