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剣の丘に花は咲く 
第一章 土くれのフーケ
第八話 士郎の使い魔としての一日
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最近士郎がタバサに頼み事をした際、ルイズとキュルケの朝食の風景を見たタバサが、その交換条件として出したことから作られるようになったのである。





 朝食が終われば、次は掃除である。士郎はルイズの部屋を、どこぞの掃除夫かと疑うほどの完璧な動きで部屋の掃除を終わらせる。
 部屋の掃除が終われば、次は洗濯である。下の水汲み場までルイズの洗濯物を運び、士郎は洗濯板をまるで慣れた剣のように匠に扱い、無数の洗濯物に付いた汚れ()を尽く洗い清めた。

 ―――なお、ルイズの下着にあっては、本人の申し立てによりメイドが洗うことになった。
 
 
 


 ルイズの朝の世話を終えると、士郎は朝食を食べに厨房に行く。厨房には勿論平民しかいない。日々貴族の生意気な子供を相手にして不満が溜まっていた平民たちにとって、ヴェストリ広場で貴族のギーシュを手玉にとった士郎はまさに英雄であった。その人気は推して知るべしである。

「おおっ! “我らの騎士”が来たぞ!」

 そう呼んで士郎を歓迎したのは、料理長のマルトー親父であった。料理長のマルトーは四十過ぎの太ったおっさんである。もちろん貴族ではなく平民であるのだが、魔法学院のコック長ともなれば、収入は身分の低い貴族なんかは及びもつかなく羽振りはいい。
 丸々と太った体に立派なあつらえの服を着込み、厨房を一手に切り盛りしている。
 マルトー親父は、羽振りのいい平民の例に漏れず、魔法学院のコック長のくせに貴族と魔法を毛嫌いしていた。
 そんなマルトーだからこそ、メイジのギーシュをただの木の枝で倒した士郎を気に入らないはずがない。厨房に顔を出す度、マルトーは“我らの騎士”と士郎のことを呼んで歓迎をしていた。何故“我らの騎士”なのかと言うと、それは士郎がギーシュを倒した一撃の前の振舞いが、まるで騎士の様だったからだ。
 また、マルトーは士郎の調理技術に対しても尊敬の念を抱いていることから、時折二人で料理談義を講じていたりもする。

「いやー、流石は“我らの騎士”。貴族を手玉に取るわ、素晴らしい料理は作るわ。威張りくさった貴族なんて比べ物にならないな」
  
 マルトー親父は、朝食を食べている士郎の顔を覗き込んだ。マルトー親父は飯を食いに来た士郎に、毎回こうやって感心するのである。それに対する応えは何時も同じ。

「あんなに多くの生徒たちの料理を作る指揮を取る、マルトーさんの方がすごいですよ」
「おおっ! お前たち! 聞いたか!」

 そしてマルトー親父の反応も同じである。厨房に鳴り響く怒鳴り声に、若いコックや見習いたちも毎度同じ返事を寄越す。

「はいっ! 聞いています親方!」
「本当の達人というのは、こういうものだ! 決して己の腕前を誇ったりしないものだ! 見習えよ
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