マザーズ・ロザリオ編
過去編
過去編―西暦2020 年春夏―
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いていく途中、職員玄関に差し掛かった所に4月から担任になった教師が落ち着かない様子で立っていた。
(どうしたんだ……?)
胸騒ぎがして近寄ってみる。どうせ放課後に校舎に入る許可を貰わなければならないし、まだ家に帰ってきて無い木綿季をお母さんが心配している事も話しておいた方が良いだろう。
「先生?」
「!!……おお、水城。どうしたんだい?」
「実はですね……」
ここに来た理由をかい摘んで説明する。しかし、特に一生懸命という具合にでもなかった。そうゆう事情なら校舎に入るのはともかく、校内放送で呼び掛けてくれるぐらいはするだろうと思ったからだ。
「な、なるほど。えっとだな。紺野さん達は今……ちょっと厄介事に巻き込まれててな」
「厄介事?どのような……?」
「いや、それは……」
教師が言い淀んだその心の隙を突いて俺は職員玄関から中に入った。後ろから制止の声が聞こえるが、耳に留めない。
胸の奥でザワザワと良くない予感が立ち上る。
「木綿季、ラン……」
校舎に滞留する空気の臭いを感じとる。
壁の塗料、床のワックス、皮脂や化粧の臭い、香水、学校独特の様々な臭いの中から捜し物を拾い上げる。
――あの安らぎを与えてくれる、優しい匂いを……。
「……応接室?」
その部屋の前に立って今度は耳をそばだてる。
聞こえてきたのは、彼女達の秘密。喧しいキーキー声がそれを捲し立てて、学校側はそれを否定しない。
されど弁護もろくに出来ていなかった。
(……知らぬは俺だけ、か)
幾度となく感じた違和感、彼女達自身やお母さんが言ったこと、全てが噛み合って、真実を悟る。
どうしようかと迷っている内に、キーキー声は罵倒に変化し、
やがて、彼を怒りに染めた。
_________________________________________
車で迎えに来ていたお母さんに木綿季と藍子を渡し、少し言葉を交すと、自分は乗り込まずに歩いて戻る事に決めた。
「く……!?」
頭痛が激しくなり、その場に蹲ってしまう。
激情のまま『力』を解放し、暴れかけた事に今さら恐怖を感じた。
(……潮時か)
頭痛が引いていくのを感じながら電話帳を開くとある番号にコールした。
『珍しいね。君が掛けてくるのは。どうしたんだい?』
「力を貸して欲しい」
心が欲するままにそう、言い放つ。
『……つまりはあの話を受けてくれる、ということかな?』
「そうだ」
電話先の相手は暫しの沈黙のうち、翌日ある場所に来るよう告げた。
翌日、午前7時。
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