マザーズ・ロザリオ編
過去編
過去編―西暦2020 年春夏―
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ら、彼女達の病気は……」
「そのような事を聞いているのではないと―――」
「そうです!こんなバイ菌まがいの―――」
唾を吐き散らし、興奮の度合いをまた一段と上げた女性が遂に、決定的な言葉を言おうとした時、ドアが静かに開いた。
「失礼します。紺野さん達を迎えに来ました。……ほら、2人とも、帰ろう」
あくまで穏やかに、敵意など一切無い口調で部屋に割って入ったのは近所に住む2つ歳上の友達。水城螢だった。
「水城君!紺野さん達はまだ大事な話の途中だと……あぁ!?」
遅れてやって来たのは若い男性教師、記憶違いで無ければ螢の新しい担任だった筈だ。
「ちょっとあなた!勝手に入って…「ほら、木綿季、藍子。早く帰ろう?今日はハンバーグだって」…!?」
彼の目にはもう木綿季と藍子しか映ってなかった。
その他以外は全て認識すらしていない。
わざとではない。
完膚なきまでの完全無視だった。
「螢、さん……」
「螢……」
「ん?元気無いぞ。ハンバーグ嫌いだっけ?」
「いや、そんなこと無いけど……」
その時になって気がつく。
螢はいつからこんな饒舌になったのか。
こんなに笑顔を見せるようになったのか。
何より、この部屋に満ちる心臓を直接掴まれたような圧迫感は……?
「い、いい加減にしなさい!先生、その子を連れていって下さい!話はまだありますから!」
「は、はい。直ぐに!ほら、水城。直ぐ終わるから、な……」
そう言って男性教師が螢の肩に触れた直後―――、
スライドドアが鉄球で潰された如くひしゃげ、轟音と共に廊下側に倒れた。
「あ……新しい腕、凄い出力だな。……普通で良いのに」
呆れたように左手を覗き込み、しげしげと眺めた後、肩に置かれたまま硬直している手を振り払い、スタスタと部屋に入ってくる。
「ね、オバサン達。何か文句あるわけ?聞いてあげてもいいよー?」
傲慢不遜に言い放つその少年に、誰も何も言うことが出来ない。
やがて、冷えきった手が何か、硬いものに包まれた。
螢の左手。
鋼鉄でできたその手に引かれ、僕達はその学校を去った。
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Side螢
「ふう……」
数分前に通ってきた道を取って返し、学校にまでやって来た。
寄り道をしていない限り通学路ではち会うかとは思っていたが、結局学校までたどり着いてしまった。
「…………ん?」
とりあえず木綿季や藍子の教室まで行こうと思って昇降口に歩
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