崑崙の章
第4話 「治るって……医師いらねぇじゃん、これ」
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北郷さんより少し上ぐらいかしら?
「喜んでください、黄忠さん、厳顔さん。名医が見つかりました」
そう言って紹介された赤い髪の青年。
彼は入ってくるなり、桔梗の全身をくまなく調べ始めました。
「……驚いた。本当に縫合手術をお前がやったのか? 多少拙いが……まったく問題ない。素人が出来ることじゃないぞ」
「拙くて悪かったな……本職にかなうわけがないだろ。それよりも痛みが酷そうだ、早く頼む」
「ああ、そうだったな。患者はすまないが……服を脱いでくれ」
赤い髪の青年が、そう言いつつ針の束の入った布を並べる。
わたくしは若干躊躇しながら、北郷さんを見る。
「えっと……」
「大丈夫。彼の名前は華佗。私が知る限り最上の仁の医師です。彼は針治療でとりあえずの痛みの緩和と、血行の改善、血流の増進などを行うとのことです」
「……よくわかりませんが、北郷さんがおっしゃるのでしたら」
そう言って、わたくしが桔梗の服を脱がしていく。
桔梗は文句を言いたそうだったが、痛みで蒼白になっており、言う気力がないようでした。
「よし……ではいくぞ! 我が身、我が鍼と一つなり! 一鍼同体、全力全快! 必察必治癒、病魔覆滅! げ・ん・き・に・なれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
ものすごい気迫。
殺気ではなく、闘気とも違う、気の圧力。
それが彼の指の先にある針に注がれていき……
「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
トトトトト、と本人の気合とはうって変わった軽快な音。
「ふう……どうだ?」
青年――華佗さんが、桔梗に声をかける。
と――
「……お? な、なんじゃ? 痛みがまったくなくなったような……」
そう言って桔梗が起き上がる。
え!? 起き上がった?
先程まで息も絶え絶えだったのに!
「小さい傷はこれで治るはずだ。背中の大きな傷まではそうもいかないだろうが……これを今晩もやればほぼ全快になるだろう」
「治るって……医師いらねぇじゃん、これ」
華佗さんの言葉に、北郷さんが冷や汗をたらしている。
……つまり、助かったのですか?
「き、桔梗? 本当に大丈夫なの?」
「あ、ああ……先程までの痛みが嘘のように消えとる。多少背中が吊る感じはするが……」
「俺でなければその痛みは、後一月は続いただろう。もっとも、北郷が麻沸散を作ろうとしていたから、痛みは抑えられたかもしれんが」
「まあ、麻酔を作ろうとしていたのは確かだけど……とりあえずどころじゃないな。ラムディ爺さんの心霊手術以上かよ……思っていた以上にでたらめだな、この世界」
北郷さんは、呆れたような安心したような、そんな表情で桔梗を見ている。
その口ぶりからすると……大丈夫の
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