第4話「仕事―裏」
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に飛び込んできたのだ。単調で、決して早いとはいえない動きだが、それでもその巨体だ。わずかにでも貰えばひとたまりもないだろう。
咄嗟に飛び掛ってきた相手を飛び越えて、背面を切りつけ、バケモノの背後に降り立つ。
「っ」
斬りつけた感触は分厚い鉄鋼に近いかもしれない。逆に彼女の腕がしびれそうになった。一方で斬りつけられた方のバケモノはその口をコンクリートにめり込ましていた。頭を上げ、それが人ではなかったことに今更ながら気付いたバケモノは噛み砕いていたコンクリートを吐き捨て、首を回し、セツナを見つけて、向き直る。
「……あれを喰らえばひとたまりも」
自分でいってゾッとしたのか、慌てて構えを取る。狙うのは甲羅に覆われていない首。またもや何の芸もなく突っ込んできたバケモノを、先程と同じ要領でひらりと飛び越える。伸びきった首に刀を振るう。
――もらった。
そう考えて一瞬だが気の抜けたセツナに、バケモノは恐ろしく異様な反応を見せた。狙われた首を引っ込め、その刀を避けた。それで終わりならばまだ良かったのだが、一旦引っ込められた首が今度は角度を完全に転換させ、セツナに伸びた。しかも、動きの遅い本体とは違い、首だけは異様なまでに早い。
「なに!?」
はらわたを食いちぎろうと開かれたその大口は、だが、セツナが空中で必死に身をよじったため、かするだけですんだ。
肉をかすかに持っていかれただけなので致命傷ではない。脇から滲み出した血がその痛みを発信するが無視する。目の前の敵を見据え、再度、刀を構えなおす。バケモノはわずかの肉片をゆっくりと咀嚼し、その滴る血をごくりと飲み干して味わっている。
――こうなったら。
腹を決めて気を集中させる。
「一息に……斬る」
普通の人間にならそれは不可能の領域。刀はどれだけ切れ味鋭くとも鉄。鉄が鉄に近い物質を斬るなど、並の技量では不可能。しかも、相手の甲羅は分厚い。50センチはあるかもしれない。これを斬るなど達人でも難しい。技を超えた業に近い。
セツナは中学2年生。たとえ幼少期からその身を真剣においてきたとして、どれほどの修練をつもうと、どれほどの才にめぐまれていようとも。
たかだか十数年の歳月で達人に至れるほど、その道は簡単ではない。
だが、彼女にはそれが可能だった。
――甲羅は実際には鉄ほど硬い物質ではないから?
否。
――彼女の刀が鉄以上のもので出来ている?
これも否だ。
答えは簡単。
彼女の剣は神鳴流だからだ。
神鳴流とは、数百年に渡り、京の深山に秘して伝わり、決して歴史の表舞台に出ることはなかった神鳴る剣の流派。
気を込め、相手を迎え討つ。
そう覚
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