百二十二話 The Red-Nosed Reindeer─赤鼻のトナカイ─
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、家に戻った時には既に九時を回っていた。
見慣れないコートを着ていたせいか母である真理に色々聞かれたのをなんとか躱してサチは今、22層のキリトの家の前に居る。と……
「よっ。悪い悪い。待たせたか?」
「あ、ううん。ちっとも」
表れたリョウが右手を立てて謝るのを見て、サチは首を左右に振る。
リョウは、ALOの時と変わらぬ赤いジャケットを羽織っていた。髪は黒くクセの付いた髪で、一部の種族だけは色を変えられる翅は、何故か趣味なのかジャケットとは合わない若葉色に変えている。そうか。と言ってカラカラと笑うと、リョウは首を傾げて尋ねる。
「で……何だ?わざわざ呼び出して」
「あ、うんっ!あのね!リョウ、これ、やっとできたから……」
そう言って、サチは有る物を取り出し、それをリョウに手渡した。それがなんであるか確認した途端、リョウの眼が見開かれる。
「お前……コレ……!!」
「うんっ。私からのプレゼントのお返しだよ?」
「おぉ!今着て良いか!!?」
「う、うん。勿論」
「っしゃ!」
予想以上の喜びように驚きつつも、促すと、リョウは即座にトレードウィンドウを開いてサチからシステム的にもそれを渡され、即座にメニューを操作する。と……
ザァッ……!
と音を立てて、少し強めの風が吹いた。
「っ……!」
強風によってか、周囲の雪が巻きあがり、粉のようなそれが周囲に舞う。
咄嗟にサチは顔をかばい、しかしすぐにその手を外す。そして、見た。
「…………!!」
以前とは違い、灰色は無く、完全な新緑色のそれ。着流したそれが風に煽られてふわりと浮きあがる。それを、ヴンッ!!と重々しく風を切る音を響かせた冷裂が圧するように収め、同時に間違いようも無く、周囲の空間がビリビリと振動する。
──それはまるで、浮遊上の全てが英雄たる彼の再びの訪れを歓迎するかのように──
ニヤリと笑ったその口が開き、自身に満ちた声で言った。
「っしゃぁ!!リョウコウ完全復活だ!!!」
続いて、最近はとんと聞く機会の無かった。とても明るい声。
「最高だぜ!ありがとな、サチ!!」
「……っ!うん!」
まるで子供のように、弾けるような笑顔で笑いながら、礼を言った涼人に釣られるように、美幸は笑顔で頷いた。
高揚した顔で、浴衣を見ている涼人が、不意に思い出したように口を開く。
「こりゃ、アガるなぁ……!うっし!ちょいと来いよ!サチ!」
「え!?ちょ、ちょっとリョウ……きゃぁっ!!?」
突然サチの手“首”を掴んだリョウが、背中から生えた若葉色の羽で空へと舞い上がる。引っ張られるように行き成り空へ連れ出されたサチは、そのまま星の瞬く浮遊城の外となる天空へ連れ出され……しかしなんとか体勢を立て直して、自分の翅も振るわせ始める。
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