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SAO─戦士達の物語
百二十二話 The Red-Nosed Reindeer─赤鼻のトナカイ─
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、ベットに入れば夜な夜なリョウの背や胸に顔を押し付けて泣き疲れるまで泣き続け、碌に眠れない日も少なくなかった。

別段彼女に恩を売るつもりが有った訳ではない。
リョウはリョウなりに、あの時彼女を積極的に守ろうとしなかった、キリトと黒猫団との関係をきちんと取り持とうとせず、しっかりとしたアドバイスをする事も出来なかった責任を果たしていただけだ。

ただそれでも、サチはやキリトはリョウに感謝の言葉を伝えて来た。
何時だったか。サチが言った言葉だ。
きっと、あの時近くにリョウがいなかったなら、私の心は暗闇に沈んだまま帰っては来られなかったから。近くに居てくれた。それだけの事が、私にもう一度あの世界で立って歩く勇気をくれたのだと、彼女はそう言った。

大げさな奴だとリョウはその言葉に笑ったが、彼女が本気でそう思っている事は、リョウも理解していた。
ただ、其れを言うなら……

「まぁ……結果的に良い方向に進んだなら、良いとすっか」
苦笑しながら、リョウは言った。
そう。あの時の自分の行動は、けっかとして今のサチを良い方向に導いて居る。
少なくとも、すぐ隣から聞こえる静かな寝息は、リョウに其れを確信させてくれる、十分な材料だと言えた。

────

「、い……ゆき……きろ……美幸」
「う、ん……?」
目を覚ますといつの間にか車は停車していた。肩を揺すられて居ることに、少しして気が付く。触れている手には、覚えが有った。

「ん……りょう……?どうしたの?」
「どうしたのってお前な……寝ぼけてねーではよ起きろ。着いたぞ」
「…………?」
未だにはっきりしない脳味噌を起床させつつ、美幸は左右を見渡す。
周囲は殺風景で暗く、よくは見えないが広さからどこかの公園の駐車場のようだ。それにしても……

「何だか……混んでるね?」
唯の公園の駐車場にしては、かなり混んでいると言うのが素直な印象だった。
実際、見通せる限り空いている駐車スペースは無いように見える。苦笑気味に、涼人も答えた。

「っはは。まあ、今日はお祭りみてぇなもんだからなぁ。どれ、行こうぜ?」
「う、うん……!」
未だに浮ついている気持ちを抑えつつ、美幸は涼人に続いて外へ出る。ひんやりとしていて、サラサラとした空気は普段暮らしている場所の空気と比べると大分綺麗で、吸い込んでみると気持ちが良い。まあ寒いは寒いが。

「さて、行くぞ〜」
「あ、ま、待って!」
歩き出した涼人に慌てたように美幸が続く。駐車場を抜けて、横断歩道を渡る。と、もう其処に目的の物が見えていた。

「わぁ……!」
「お、やってるやってる」
其処に有ったのは、左右に広がる建物全てが、赤やら黄やら青やら紫、緑にオレンジ、白、黄緑、に輝
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