百二十二話 The Red-Nosed Reindeer─赤鼻のトナカイ─
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サチが部屋に入ってくると、途端に十歳児モードになったユイが彼女に抱きつく。
サチは一瞬驚いたようだったが、すぐに反応しその小さな体を抱きとめると、慈しむような微笑みを浮かべて行った。
「ユイちゃん。こんばんは」
「はい!こんばんはですねーね!」
少しの間ユイと触れ合っていたサチだったが、そのうち少し気になったように周囲を見渡し、リョウの姿を見止めるとその視線を止める。
「えっと……」
「あ!そうでした!」
その視線にきがつくと、ユイは即座にポンっと音を立てて妖精モードに戻ると、サチに向けて言った。
「叔父さんが、用事があるらしいです!」
「あ、うん。どうしたの?リョウ」
「あー、おう」
トコトコと駆け寄ってきたサチに立ち上がり、頭の後ろを掻くと、リョウは言いづらそうに言った。
「あー、いや、なんつーか……お前、明日暇か?」
「え?」
「いや、明日イブだし、学校も四十分の五限終わりではえぇしよ、ちょいと、どっか行くかと思ったんだが……どうだ?」
そう言ってサチの表情をうかがうリョウだが、彼女はまるでフリーズしたように動かない。その様子に、頬を掻いてリョウが言った。
「あー、都合悪きゃ良いぞ?」
「え!?う、ううん!!行く!行くよ!ど、何処に……?」
「それは、今から決める」
「あ、そ、そっか……」
再び頬を掻いて言った涼人に、サチは顔を真っ赤にして俯き、それぞれ顔を見ない。
なので、涼人には見えなかったのだが……サチの顔は心底嬉しそうに微笑んでいた。
「……(グッ!)」
「……(グッ!)」
そんな二人の死角で、母と娘がサムズアップを互いに躱しているのを、父が苦笑ながら見ていたとかそうで無かったとか。
「んじゃま、明日がっこ終わってから車で行けるとこな。制服のままで良いか?」
「う、うん……っ!」
リョウの問いにコクンコクンと頷いているサチをみて少し苦笑したリョウは、ようやく再び椅子に座り込んだ。
――――
さて、翌日。授業が終わり、リョウは大きく伸びをすると、そのまま美幸の席へと向かった。
「美幸」
「……(ぽけー)」
「……?おいっ!?美幸さん起きてるか?」
「ひゃっ!?え?あ、うんっ、はいっ!何!?」
何故かぽけっとしている美幸に、涼人が呼びかけると、パニクったような反応で一瞬跳ねた後、彼女は涼人の方に向く。
「なんだよ、ぼーっとして、熱か?」
「う、ううん!平気だよ!?えっと……」
「あぁ、駅の近くに車止めてあっから、とりあえず駅まで行くぞ」
「う、うん……もしかして、今日の朝、乗ってきたの?」
少し探るように美幸が聞くと、涼人はニヤリと笑って答えた。
「駐車場に止めてきた。がっこには乗り入れてねえ
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