百二十二話 The Red-Nosed Reindeer─赤鼻のトナカイ─
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「もう!酷いよリョウ!」
「っはは!悪い悪い!!!今日ちょっと野良連中と約束あってよ!ぜってー楽しいから付き合えよ!」
「え?は、はいっ……!」
言いながら突然急降下しだしたリョウを、サチは必死に追い掛ける。たしか、今浮遊城が居るのは……
目の前に、サーカスのテントのような物が乱立する街が見えた。プーカの首都、ブレィメンだ。
「ブレィメンに行くの!?」
「おう!ちゃんと付いてこいな!!」
「うんっ!」
そのまま全速力で下降していくリョウに続いて、サチはどんどん下降していく。風は身を切るように冷たかったが、不思議と高揚した胸が、体を温める。
そうして、サチとリョウはゆっくりと地面に降り立った。ブレィメンの中央広場だ。
「間に合ったな。こっちだ!」
「え、えぇ!?」
再びサチの手を引いて、リョウは歩きだす。少し歩いて……其処から手をはなして「此処で待ってろ」と言うと歩いて行き、何や広場中央に集まっていたメンバーと話す。そうして、少しすると。再びサチの所に戻ってきた。
「うし!サチ、今から此処で演奏会やるんで参加すんぞ〜。お前ボーカルな」
「……え?」
疑問の声を上げている間にもサチは広場の中心に連れ出され……
「えぇぇ!!?」
「ほれ!準備しろ!」
周囲のメンバーが楽器を構え出す中、中心にマイクを持って立たされた。
周囲の妖精たちが、一片にサチの事を見ている。
「ま、まって!リョウ!!」
「あん?何だよ」
「な、なんで突然こんな事になるの!?そ、それに……何歌えばいいの!!?」
「あぁ、そだったな!」
言うと、リョウは行き成りテキストデータであろう羊皮紙を実体化させ、美幸に手渡します。
「大丈夫だ。日本語で良いぞ」
「え!?に、日本語でって……」
言いながらトランペットを取り出し遠ざかるリョウに慌てながらも、サチはタイトルを見る。
Rudolph The Red-Nosed Reindeer─ルドルフ・赤鼻のトナカイ─
「……あ」
そのタイトルを見た途端、サチの頭の中に、一つの記憶がよみがえった。
二年以上前に、今とは全く違う状況で、ある一人の少年の為に歌ったあの時の曲。ニ年前の今から十数分後、自分の運命が違っていたら、かの少年に聞かせる筈だった歌……
「…………」
あれから時が経ち……自分達は変わった。
いま自分は、あの時と違って、とても幸せだし、死を毎日恐れても居ない。あの時とは、何もかもが、反対の状況。
「うっし……リハも何もねーけど、菓子は知ってるよな?サチ、良いか?」
「……うん。良いよ」
リョウの問いに。コクリと頷き、微笑んで答える。
もうまもなくで、クリスマスだ。そうしたら、リョウにメリークリスマスを言おう。
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