第百三十八話 嘘も方便
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昨日も我が家へその事を話しに来た者がいた」
「なるほど、まさか公爵までその様な与太話を信じた訳では有りませんな?」
「無論だ。その様な話、信じる事すら不敬な事」
「左様か」
「しかし、このまま行けば噂が一人歩きして陛下の御為にも成らぬと思い。恐れ多いことなれど陛下にお聞きするための謁見に来たのだが」
「陛下のご気分が優れぬと言う訳ですな」
リヒテンラーデ侯の言葉に無言で頷く。
「公爵、その点については陛下より伺っております」
「何と。して陛下はどの様な事を?」
リヒテンラーデ侯は一呼吸置いてから答えた。
「恐れ多くも皇帝陛下におかれましては、今回の件“敵を欺くにはまず味方から”との事」
「それはいったい?」
「公爵も存じておりましょうが、サイオキシン麻薬事件の余波で軍は今再編成のまっただ中、其処へ叛徒共が攻めてきた場合、予想以上の損害を受けることになる、その矛先を躱す為、叛徒共を矯正区や農奴から解放し、叛徒の考えを鈍らすことを行っているのです」
「何と、確かに軍の再編成には来年までかかると聞きましたから、なるほどその為に」
「左様、公爵もご存じでしょうが、クロプシュトック侯、ヘルクスハイマー伯、リッテンハイム侯以外の農奴は解放されてはおりませんぞ、此こそ陛下が貴族の権益に何ら干渉しないとの証拠」
「なるほど、確かに謀反人と関係者以外は処罰されていない、なるほど、しかし陛下も陛下だ。教えて下されば良いものを」
「公爵、上手の手から水が漏れるとも申します。厳に収容所の話が公爵にまで届いておるのですから」
「確かに、それはそうだ」
「陛下は、公爵が他貴族が騒ぎ立てるのを静める事をご期待しております」
「なるほど、説得をせよと言う事ですな」
「叛徒云々の下り以外は、彼等の不安を和らげるために話しても良いとのこと」
「判りました。このブランシュバイク公オットー、陛下の婿として皇室の藩屏として働きましょう」
「そう言って下さると、陛下も御喜びになるでしょう」
「説得に際して陛下よりのお言葉です」
「何ですかな?」
「アレクサンドル2世の事を知るが良いと」
「アレクサンドル2世?」
「公爵はご存じ無いか」
「恥ずかしながら」
「地球の19世紀ロシア帝国の皇帝で農奴解放を行った皇帝でしてな」
「では陛下の真意は」
「いや公爵、アレキサンドル2世は農奴解放令を出したが、結局は農奴制は法的には廃止されたが、農奴から解放からされた農民の生活は以前よりかえって苦しくなり、解放令の内容に不満をいだいた農民による暴動が各地で起こり。貴族や農民から怨まれた挙げ句、暗殺されたのだ」
「なんと、では陛下は農奴解放はしないお考えで良いのですな」
「そう思って貰って構わないとの事だが
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