第三十二話 図書館その十六
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いわよね」
「ないわよ、十五年生きたらかなり長生きでしょ」
愛実は聖花の問いに飼っているチロのことを思い浮かべながら答えた。
「チロは何十年も生きて欲しいけれどね」
「五十年でもね」
「無理でしょうね、そこまでは」
犬にも犬の寿命がある、だから愛実もこのことは諦めていた。
「五十年も。普通の犬が生きるのは」
「そうよね、普通はね」
「ものでもね、百年って一口に言うけれど」
「途中で壊れたりするわよね」
「使えなくなったりね」
「だからものでも心を持つっていうと」
「相当丁寧に使わないと駄目ですよ」
ろく子もこう話す。
「本でも三十年で紙がかなり古くなりますね」
「小学校の図書館の本とかそうですよね」
愛実はろく子の言葉から彼女が聖花と一緒に通っていた小学校のことを思い出してそのうえで彼女に返した。
「何十年もある本とかありますけれど」
「紙がもうぼろぼろになってますね」
「三十年前の本とか」
そうした本はもう、というのだ。
「かなり古くなってて」
「読むと本がばらばらになりそうですね」
「少年探偵団のシリーズとかそうでした」
愛実は江戸川乱歩の代表作を話に出した。
「あのシリーズよく読んだんですけれど」
「かなり古かったんですね」
「借りてる時何時ばらばらになるか怖かったです」
そこまでだったというのだ。
「いや、本当に」
「そこまで古い本だったんですね」
「本の内容は面白かったんですけけれど」
愛実は少年探偵団のシリーズが好きだった、それで話すのだった。
そしてそうした話をしながら図書館の本棚の奥に向かう、泉であるかも知れない場所に。
第三十二話 完
2013・4・12
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