第九話 〜元凶〜
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またしてもまたしてもまたしても…ッ!
私は怒りに拳を握り締めていた。
それは私が任務を終え、先に関で豪帯様の帰還をお待ちしていた時の事だ。
"豪統様!凱雲様!洋班様の軍が見えました!"
"ッ!"
"来たか!"
私と豪統様は洋班…もとい豪帯様を北門近くの宿で待っていた。
私はともかく豪統様は豪帯様が関を立たれてからのこの約2日間どれだけ心配を重ねながらこの瞬間を待っていた事か。
私が帰還してからは尚更な事だ。
私からの報告に豪統様は涙を流されて悔やまれた。
何度も自分を責められ、何度もそれをなだめた。
本当なら私が豪帯様をお守りせねばならないのだ。
これは私の責任だ。
それから一日はただただ豪帯様の安否を心配しつづけた。
そしてその時は来た。
…だが、私達の心配は思わなぬ形で訪れた。
簡単に…とは言っても洋班を刺激しない程度に礼を尽くしてから、二人で豪帯様をお迎えした。
…だが、豪帯様は軍の後ろをただ一人で馬を引き連れて歩いていた。
何か嫌な予感をしながらも豪帯様に近付いてみた。
だが、その顔には生気は無く、明らかに何かあったのを物語っている表情だった。
"大丈夫か?何があった?"
そんな豪統様の言葉に豪帯様は。
"…今はほっといて"
と答えられた。
その言葉でとうとう私は憤怒を堪えきれずに関内へ向かう洋班の名を力の限り叫んだ。
その怒声は関内にもそれは響き渡り、兵は皆唖然としていたのを覚えている。
豪統様に止められ、兵士に止めらるも怒りの余り全てを蹴散らしながら兵団の前を行く洋班を目指した。
兵団の先頭についてみれば黄盛の後ろに隠れながらビクビクしている洋班がそこにいた。
"貴様!覚悟はできているだろうな!"
"なんの事だ凱雲!貴様無礼だぞ!"
"お、俺は何もしちゃいない!何もしちゃいない!"
"よ、洋班様?"
そんなやり取りをした後に周りにいた兵士達が私に事情を説明してくる。
そこでやっと豪帯様はあれ以来手を出されていないと知る。
…だが、それでも悔しさや怒りは収まらなかった。
だが。
"凱雲!いい加減にしろ!"
その言葉で我を取り戻した。
そして私はその後に豪統様から謹慎の処分を受けて今自室にいる。
なんてあり様だ。
本来ならこんな時こそ私が一番冷静さを保たねばならないのに。
これでは豪統様の補佐は失格だ。
実の親が耐えているというのに私は…。
ドガンッ
ピシッ
石でできた壁にヒビが入る様な音がした。
案外壁は厚いのだな。
そんな事を思いながら自分の拳を見る。
その拳は赤く滲んでいた。
あの凱雲があそこまで取り乱すとは…。
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