第九話 〜元凶〜
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私は自室で夕陽を窓から浴びながらそんな事を考えていた。
それというのも私の子帯を思っての事だとはわかってはいるが、やはりこの関を守る者としてはあの様な行為は避けて欲しかった。
せっかく洋班様も関での目的を終えて帰られる時が来たのだ。
あまり帰られる前に刺激して欲しくない。
『…』
だが、あの凱雲が冷静さを失うなんて何年ぶりだろうか。
それくらい彼にとっては衝撃的だったんだろう。
…勿論それは私も同じだ。
帯のあの表情。
その顔が今でも鮮明に思い出される。
関に来た時、一緒に北門の整備をした時、その時々の表情からは想像なんてできないくらいに疲れ果てたその顔を見るのは親として何より辛かった。
そしてその原因は私の招いた事だった。
私が親として、官士としてしっかりしていればこんな事にはならなかったんだ。
『…すまない』
そんな言葉が漏れた。
だが、もうそんな事は言ってられない。
もう翌日には目的を終えた洋班様はこの関から出ていかれる。
やっと終わったんだ。
だからこそ、もう二度と私達に不幸が訪れないようにしっかりと洋班様の気を損ねないよう、また洋循様への報告も兼ねてしっかりと"種"を準備せねば。
私は再び目の前にある紙に筆を走らせる。
もう少しだ。
もう少しだけ待っていてくれ帯。
そしたら私が見せたかったモノ全てを見せてやる。
もう苦しむ必要のない世界を。
…そうだな。
だが、やはりあの帯の様子は気がかりだ。
だからこの仕事が終わったら少しだけ帯様子を見に行こう。
…いいよな?
私は沈み掛けた夕陽に照らされながらひたすらと筆を走らせた。
『…ふー』
『お疲れ様でございます』
俺は用意された部屋の寝床に身体を投げた。
人を切る事がこんな疲れるなんて。
確かに興奮によって余分に疲れたのもあるが、名剣を持ってしても人の肉を引き裂くまでの動作や相手の行動によって身体中の筋肉を使った気がする。
正直な話し怠いのだ。
『…よっと』
寝床の上で仰向けになり、自分の手のひらを見てみる。
そして今日の村での事を思い返す。
なんというか、同じ生きた人間を自分の手で斬り殺すというのはもっと何か感じるものがあると思っていた。
それがどうだ?
あまりに呆気なく死ぬもんだから最初こそは鳥肌がたったもんだが、後半にはどうしたら綺麗に切り裂けるかとかどうにかして真っ二つにできないもんかとかそんな事を考えながらただひたすら腕を振っていた記憶しかない。
"なんというか飽きた"
それが今日の感想だった。
『…では、明日の出発に備えて準備を整えてまいります』
『あ?』
すっかり忘れていたが、この黄盛は律儀に
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